同社の強みはもう一つある。それは、「貸別荘システム」というビジネスモデルを持つことだ。
コロナ禍で別荘をはじめとするリゾート物件の需要が高まっている。不動産会社のリストインターナショナルリアルティによると、別荘・リゾート物件の問い合わせ件数は、20年1月に全体の16%にすぎなかったのが、21年1月には45%と約2.8倍も増加した。
そうしたニーズの高まりを受けて、貸別荘関連のサービスも相次いで登場する。例えば、NOT A HOTEL(東京都渋谷区)というベンチャーは、別荘用などに購入した物件を、オーナーが使わないときには、他者にホテルとして貸し出すサービスを開始し、現在までに累計で約18億円の資金調達を実現している。
このような貸別荘サービスは一般的に「バケーションレンタル」と呼ばれており、全世界の市場規模は約11兆円とされている。日本でも今後、8000億円以上の規模になるという試算もある。
いまや巨大市場となりつつある貸別荘ビジネスに関して、実は、セラヴィリゾート泉郷は45年以上も前から事業を展開している。この分野に先鞭をつけた同社は、さらなる施策を打つことによって、アフターコロナの世界で一気に勝ち馬に乗ろうとしている。
セラヴィリゾート泉郷は、社名にも表れているように、セラヴィリゾートと泉郷という2つの会社が合併してできている。後者の泉郷が、貸別荘システムのビジネスモデルを作り上げた走りともいえる会社だ。
1970年に八ヶ岳中央観光として創業し、八ヶ岳南麓を開拓して別荘地分譲や観光事業などを手掛けた。創業者は久保川弘雄氏。生命保険会社を脱サラし、鍬(くわ)を持って、自らの手で山を切り拓(ひら)いたというエピソードが、社内の伝説として語り継がれている。当時はただの森林でしかなかった八ヶ岳南麓を全国有数のリゾート地にした立役者の一人である。
会社設立時からすでに貸別荘システムの構想はあり、1975年には第1号のオーナーも誕生している。この時に開拓されたエリアが、後述する「ネオオリエンタルリゾート八ヶ岳高原」である。
現在、セラヴィリゾート泉郷の本社は東京にあるが、会社の中核機能を備えるのは、創業の地であり、2000以上のコテージを管理する八ヶ岳エリアである。
別荘地というと、コテージがまばらに点在しているイメージを持つ人も多いだろうが、同社が八ヶ岳で管理、運営する一地域であるネオオリエンタルリゾート八ヶ岳高原は、面積約40万坪、東京ドーム23個分の広大な敷地に1200以上のコテージが立ち並び、売店やレストラン、コインランドリー、温泉などもある「一つの街」を形成している。域内のコテージのうち約200軒は貸別荘として、一般客が宿泊できる施設となっている。
長い歴史によって積み重ねられた下地があるため、コロナ禍でも同社のビジネスは大コケしないのである。
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