セラヴィリゾート泉郷が磨き上げてきたこのビジネスモデルは、現在では他社でも見ることができる。例えば、戸建てのコテージでは藤和那須リゾートが運営する「那須ハイランド」(栃木県那須町)や、エンゼル那須白河の「エンゼルフォレスト那須白河」(福島県天栄村)など、区分所有では東急リゾートの沖縄の物件などが類似のシステムだという。
ただし、新築コテージをリースバック前提で販売する事業に関しては、数十年前から手掛けているのは、セラヴィリゾート泉郷くらいしかないそうだ。
「別荘地を開発、管理する会社が、貸別荘・宿泊事業をある程度の規模で展開していたのは当社だけでした。その後、北海道・ニセコで事業を行う泉郷(いずみきょう)さんや、エンゼル那須白河さんなどが参入してきた状況です」(セラヴィリゾート泉郷担当者)
このことからも先見の明があったと言えるだろう。それが今、コロナ禍での耐久力につながっているのは興味深い。
しかし、そんな同社も何度か経営危機に直面している。
2003年に飲食事業などを展開するセラヴィリゾートが泉郷を買収し、04年にセラヴィリゾート泉郷が設立した。しかしながら、親会社のセラヴィホールディングスによる「名古屋港イタリア村」や「セラヴィ観光汽船」といった事業が相次いで破産し、グループ会社のセラヴィリゾートとセラヴィリゾート泉郷は08年、東京地裁に会社更生法適用を申請した。負債総額は360億円に上った。
会社更生法に基づき、09年にこの2社が合併し、現在のセラヴィリゾート泉郷に。そして、13年11月に会社更生手続きが終結した。
そこから再スタートを切った同社は、観光におけるインバウンド需要の高まりもあって、収益を徐々に伸ばしていき、売上高約100億円の大台に。すると20年、今度は同社のビジネスモデルなどに目をつけた投資ファンドの日本企業成長投資の傘下に入ることとなった。
コロナ禍、そして投資ファンドによる大胆なテコ入れ——。ここで成果を出せるかどうかが、会社としての存続にかかわるといっても過言ではないだろう。裸一貫で八ヶ岳を開拓した創業者の思いを絶やしてはならない。
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
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