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「やけくそ」でつくった切り餅調理機が大ヒット 洗車機トップシェア企業の個性的な開発方針とは家電メーカー進化論(5/6 ページ)

» 2021年11月16日 07時00分 公開

 冒頭で紹介した「TEGARU=SEIRO」は竹と木でできたせいろを採用した蒸し器だ。プラスチック容器を使ったスチーマーは数多くあるが、本格的なせいろを使った家電はほかにはない。これも一人の女性社員のアイデアから生まれた製品だ。

 ガスコンロでせいろを使っていると火加減が難しく、せいろを焦がしてしまったり、蒸し上がりが毎回変わってしまう。家電で火加減を調節することでもっと手軽にせいろ料理を楽しみたいという、シンプルなアイデアだった。製品化してみると、本格的なせいろを使っていることが注目を集め、多くのメディアが取り上げ、ヒットにつながっていく。さらに21年のグッドデザイン賞も受賞した。

グッドデザイン賞を受賞した電気せいろ「TEGARU=SEIRO」。機能だけでなく、あえてせいろを使うのがエムケー精工ならでは。直径18センチメートルタイプに加えて、21センチメートルタイプも登場した

 「アイデア家電を生み出す方法について言うと、実は弊社には、企画部門などはありません。事前の市場調査やマーケティングもほとんど実施していないのです。

 お客様の欲しいと考える製品の一歩先、『これが欲しかった』と思ってもらえるような商品を作りたいと考えています。発想にブレーキをかけてしまわないためにも、市場規模や何台売れるのか、といったことはあえて聞かないようにしています」(丸山氏)

 それよりも大切なのが販売したあとの調査だと丸山氏は語る。購入したお客様の意見を聞き、修正すべき点は修正していく。また協力工場で製造した製品の場合は、発注ロットの範囲の中で売れ行きをウォッチして追加発注をするか見定めている。

 「社員には、私の感覚は当てにしないで勝手にやれと言っています。というのも、私は『黒にんにくメーカー』は売れず、『TEGARU=SEIRO』は売れると思っていたのです。しかし初年度だけで見たら『黒にんにくメーカー』のほうが売れていました(笑)。私の役割は、ダメだったときにやめさせるだけ。アイデアを製品化するゴーサインは各事業部長に任せています」(丸山氏)

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