エムケー精工の最新の売上高は256億円(21年3月期)。しかし、その中で家電が占める割合は決して多くない。家電を含むライフ&サポート事業の売上高は約68億円だが、そこには農家向けの低温貯蔵庫や食品工場向けの食品加工機・充填機なども含まれている。コロナ禍における巣ごもり需要の増加によって、家電の売上や利益率は向上しているが、多くはないという。
「家電もB to B向けの製品も、人材のコアスキルは機械、電機、電子系、そして制御でつながっています。例えばセルフ式のガソリンスタンドが解禁されたとき、お客様が洗車機の操作パネルを触るようになりました。そのときマイコン制御を始めとする技術が必要になったのですが、当弊社の家電部門にはそういう技術者がたくさんいたので素早く対応できました。洗車機市場では後発だった我々が現在トップクラスのシェアになった背景には、こういった技術対応力があるのです」(丸山氏)
またB to C向けの家電部門があることが、採用や育成面での大きなメリットになっているという。長野県に本社があるエムケー精工は、採用面でどうしても不利な状態だ。だがB to Cの商品があればより身近に感じてもらえるほか、人材育成の面でも仕事を任せやすいというわけだ。
「エムケー精工には、18年に迎えた70周年を機に定めた『エムケーフィロソフィー』があり、我々は美と食と住を深掘りし、横に広げていくことを記しています。家電においては大手ができない小さな市場で、魅力的で面白いものを見つけて商品化していく。今後IoT家電が広がっていくと思いますが、我々はアナログの強みを生かしていきたい。だから家電はニッチでもいいと考えています」(丸山氏)
将来的には会社の売り上げを、500億円、そして1000億円に伸ばしていきたいと語る丸山氏。そのために18年には食品加工機のメーカーを買収するなど、業務範囲をさらに拡大している。そしてこの業務用の食品加工機のノウハウも、家電開発のプラスになると見ている。
一人の社員のアイデアから生まれた「黒にんにくメーカー」は、実際に家電としてヒットしただけでなく、道の駅などへ出品する第六次産業向けの大型モデルが新たにラインアップに加わるなど、これまでにはない市場を生み出し続けている。
エムケー精工では、業務用機器で培った技術や経験、そして社員一人ひとりのアイデアがほかにない新しい家電を生み出し、業務用として展開するだけでなく、家電開発で育成した人材が業務用機器開発でも活躍する、という好循環を作り出しているのだ。
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