年末調整の電子化は「サービス導入で解決」ではない 「中途半端な電子化・効率化」に潜むリスク連載「情報戦を制す人事」(2/4 ページ)

» 2021年12月09日 16時30分 公開
[伊藤裕之ITmedia]

電子化で何が変わるのか 人事部門のメリットは?

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 本来、上記の証明書類は、紙ないしは申告システム内で記入するだけでなく、原票の添付も必要です。

 受け取った人事担当側も、添付された内容と申請内容が一致するかをチェックする必要があり、さらに紙申請であれば、その情報を年末調整システムに登録、あるいは別途登録データを作成し、CSVなどで一括登録という運用が必要となります。

 特にチェックからデータ登録までは、従業員1人分実施するだけでも10分はかかる作業です。1000人分実施したら単純計算で10000分≒160時間=1人月必要となります。従って多くの企業は、とても人事担当者だけで対応できず、アウトソーシング化したり、普段は給与に関係しない人事部員総出で作業を実施していました。

 年末調整の電子申請は多くの企業で導入されていますが、一方で、申請者のシステムへの直接記入と紙の添付が残っているケースや、保険料や住宅情報のチェックが担当者の業務として残っているケースが多く見られます。

 また、証明書が添付された申告書は7年間の保管が必要です。従業員数の多い企業などでは、倉庫に申告書の入った段ボールが山のように積まれており、処分が手間になるうえ、たまる一方で保管場所もなくなってきたという状況もあります。

 今回の法改正は、上記課題の解決につながります。実際、前出の国税庁Webサイトでも下記のように記載されています。

勤務先のメリット

 勤務先は、従業員が年調ソフトで作成した年末調整申告書データを利用することにより、控除額の検算が不要となります。

 また、控除証明書などデータを利用した場合、添付書類などの確認に要する事務が削減されます。

 さらに、従業員が年末調整申告書作成用のソフトウェアを利用して控除申告書を作成するため、記載誤り等が減少し、従業員への問い合わせ事務も減少することが期待されます。

 加えて、書面による年末調整の場合の書類保管コストも削減することができます。

(※筆者注:年末調整申告書データを利用して年税額の計算などを行うためには、勤務先の給与システム等が年末調整申告書データの取り込みに対応する必要があります)


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