クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

今年読まれた記事と、全力で止めたい超小型EV「C+pod」池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2021年12月27日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

常に全開以外の選択肢がない

 まず遮音はもう無きがごとし。ただまあこれは車格と目的を考えて許す。しかし、トルク不足がかなり厳しい。筆者は大抵のクルマに乗って「遅い」と感じない人だが、これは別。2車線道路の信号でごくおとなしい加速についていくのに、常に全開を求められる。歴史上のベーシックカーを振り返っても、ローバーのミニはもっと速かったし、シトロエン2CVですらここまでのいっぱいいっぱい感はない。唯一記憶にある中でいえばフィアット500。もちろん今のではなく、いわゆるヌォーバチンクと呼ばれるRR時代の、いや分かりやすく言えばルパン三世のアレだ。

 とにかく遅い。冷静にいえば、街中の流れにはギリギリついていける。実用限界を保ってはいるものの、常に全開以外の選択肢がない。それは疲れる。

 次にブレーキだ。今時ここまで不自然なブレーキはなかなかない。絶対的な効きは足りているのだが、リニアリティが皆無。それとこういう用途のクルマとして初期の踏力がいりすぎる。ノンサーボのレース車両みたいなフィールで、一周回って良いのかもと錯乱するくらい普通ではない。マニアが乗るものならともかく、老若男女が乗る働くクルマとしては許容できない。

 そしてブレーキフィールを悪くすることに貢献しているのが前後のサスペンションだ。とにかく固めてあって動かない。ブレーキを掛けた瞬間つっかい棒のように突っ張る前足のせいで、フロントタイヤの接地感がペダル越しに分からないことでさらにブレーキフィールをおかしく感じる。

 おそらくディメンションがダメなのだろう。車両サイズが規定するタイヤの配置位置、つまりホイルベースとトレッドが、全高に対してどちらも足りていない。マイクロカー規格そのものの問題のような気がする。所与の条件が厳しいことは理解するが、ホイールベースが短いものだから当然、路面の凹凸による前後のピッチングもかなり厳しい。マイクロカーはダメかもしれない。

 与えられた規格に対して、いろいろ悩んだ末の落としどころなのかもしれないが、せめて足がもう少し動かないとどうにもならない。タダでさえフロント荷重が軽い上に、ブレーキで前荷重が呼べないので、転舵(てんだ)時のステアフィールはスカスカで、頼りないことこの上ない。「RRはそういうものだ」と知ってはいるが、そんなことを体感的に理解している人がキョービどれだけいるのだ。

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