さて、2021年が終わろうとしている。筆者にとってはカーボンニュートラル戦争に明け暮れた1年だった。言うまでもないが20年10月に菅義偉前首相の所信表明演説で、突如50年カーボンニュートラル宣言が行われ、それと前後する形で「ガソリン車禁止論争」が吹き荒れた。
政府原案は30年代半ばに「純ガソリンエンジン車禁止」を提言するものだったが、「ゴールを35年に具体化せよ」とか「純ガソリンエンジンだけでなくハイブリッド(HEV)も含めよ」とか、より過激な目標設定を強引に推し進めようとする政治勢力も散見された。うっかり世論をそちらに誘導されれば、日本経済の大黒柱である自動車産業が大打撃を受ける恐れがあった。
「ガソリン車禁止論争」が吹き荒れた21年、年末にはトヨタがBEV16車種を一挙お披露目するという大イベントも
環境は大事な話だが、むやみやたらに厳しい目標設定にしてもできないものはできない。BEV(バッテリーEV)の価格低減が進まない実情を踏まえれば、国民の大半から移動の自由を奪い、かつ、日本経済を焼け野原にしかねない暴論だ。
上級国民の自己満足でそんなデタラメな政策を取られては堪ったものではない。ともすれば流されそうになる世論を引き戻すためにひたすら原稿を書き続けた1年だったということである。
さて、その21年、この原稿も併せて、筆者がITmedia ビジネスオンラインに書いた記事は30本。
読まれた順に並べるとベスト10は以下のようになる。
- 【決算】三菱の厳しすぎる現実 国内乗用車メーカー7社の決算(後編) 2021.06.07
- 【経営】内燃機関から撤退? そんな説明でいいのかホンダ 2021.05.31
- 【製品】圧倒的に正しいEV登場 2021.01.11
- 【製品】新型アクア ヤリスじゃダメなのか? 2021.06.23
- 【経営】マツダの第6世代延命計画は成るか? 2021.01.25
- 【決算】国内乗用車メーカー7社の決算(前編) 2021.05.31
- 【製品】トヨタSUV陣の最後の駒 玄人っぽいクルマ作りのカローラクロス 2021.10.04
- 【脱炭素】EVの行く手に待ち受ける試練(前編) 2021.07.12
- 【決算】トヨタは、1800億円の部品代高騰をどうやって乗り切ったのか 原価改善のファインプレー 2021.11.25
- 【脱炭素】ガソリン車禁止の真実(ファクト編) 2021.01.01
決算が3本、経営が2本、製品が3本、脱炭素が2本と割とバランス良く読まれていて、ジャンルに偏りがない。
筆者はよく同業者から「決算の人」とか、最近は「脱炭素の人」と言われるけれど、製品軸の記事もちゃんと読んでいただいていることを改めて確認した次第である。
- 三菱の厳しすぎる現実 国内乗用車メーカー7社の決算(後編)
5月初旬に各社から発表された通期決算の結果を比較してみる本企画、前半ではトヨタ、日産、ホンダの3社を分析した。後編ではスズキ、マツダ、スバル、三菱を分析してみよう。
- 内燃機関から撤退? そんな説明でいいのかホンダ
ホンダは新目標を大きく2つに絞った。一つは「ホンダの二輪・四輪車が関与する交通事故死者ゼロ」であり、もう一つは「全製品、企業活動を通じたカーボンニュートラル」。そして何より素晴らしいのは、その年限を2050年と明確に定めたことだ。ホンダは得意の2モーターHVである「e:HEV」を含め、全ての内燃機関から完全卒業し、EVとFCV以外を生産しない、世界で最も環境適応の進んだ会社へと意思を持って進もうとしている。
- 圧倒的に正しいEV登場
トヨタ自動車は2020年12月25日に、超小型モビリティEV車、「C+pod」(シーポッド)を、法人と自治体を対象に限定して発売した。価格は2グレード構成で165万円と171万6000円(それぞれ税込み)。
- 新型アクア ヤリスじゃダメなのか?
7月19日、トヨタ自動車は新型アクアを発売した。先代(初代)のアクアを振り返ってみれば、これはなかなかに酷(ひど)いものだった。そして、今回のアクアにはもうひとつ大きなトピックがある。それがバイポーラ型バッテリーの採用だ。
- マツダの第6世代延命計画は成るか?
マツダはこのFRのラージプラットフォームの開発をやり直す決意をして、発表予定を1年遅らせた。ではその期間をどう戦うのか? マツダは第6世代に第7世代の一部構造を投入してレベルアップさせながらこの遅れ分をカバーしようとしている。キーとなるのが、17年に第6世代の最終モデルとして登場した、マツダ自身が6.5世代と呼ぶ2代目CX-5である。
- 国内乗用車メーカー7社の決算(前編)
例年ゴールデンウィークが明けると、国内自動車メーカーの通期決算発表会が相次ぐ。業界全体に対しての今年の総評を述べれば、コロナ禍の逆境にもかかわらず、各社奮戦し、期首に懸念されていたような危機に陥ることなく、日本企業の底力を見せつける結果になったと思う。ただし、1社だけ惨憺(さんたん)たる結果のところがある。
- トヨタSUV陣の最後の駒 玄人っぽいクルマ作りのカローラクロス
カローラクロスは、これまた難しいクルマだ。率直な感想としては「十分以上に良い。だけどこれといって光るとか、ウリになりそうな何かがない」。という書き方をすると、これがまた「だから80点主義なんでしょ?」という話になるのだろうが、そういわれると、そうじゃない。
- EVの行く手に待ち受ける試練(前編)
電動化を進めようとすると、極めて高いハードルとしてそびえ立つのがバッテリーの調達である。バッテリーの調達に関しては、大きく分けて問題が2つある。ひとつはバッテリー生産のひっ迫、もうひとつはバッテリー原材料となる鉱物、とくにレアメタルの絶対的不足である。
- トヨタは、1800億円の部品代高騰をどうやって乗り切ったのか 原価改善のファインプレー
すでにお聞き及びの通り、上半期決算でトヨタが過去最高益を記録した。ほんの2カ月前には、部品不足による生産調整で40万台規模の追加減産のニュースが飛び交ったにもかかわらずにだ。筆者も「さすがに今回は厳しいだろう」と考えていたのだが、話があまりにも変わって、少々頭の切り替えが追いつかない。一体トヨタはどうなっているのか?
- ガソリン車禁止の真実(ファクト編)
年末の慌ただしい時期に、自動車業界を震撼(しんかん)させたのがこのガソリン車禁止のニュースだった。10月26日の菅義偉首相の所信表明演説と、12月11日の小泉進次郎環境大臣会見が基本になるだろう。カンタンにするために、所信表明演説を超訳する。
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