大手企業74社が参画 ステーブルコインDCJPYで円がデジタル化、何が変わる?金融ディスラプション(3/4 ページ)

» 2022年01月26日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

銀行預金をプログラマブルに

 プログラムを組み込んで、決済時にさまざまな処理を実現することを「スマートコントラクト」といい、仮想通貨の草分けの一つであるイーサリアムが実装している。同様に、ブロックチェーンを使えばプログラム可能な通貨が作れることは分かっていた。問題は、どのように実装するかだ。

 そこでデジタル通貨フォーラムが採ったのが、銀行預金をプログラム可能にするという方法だ。「日本では、今後も銀行が支払決済の中核を担う可能性が高く、銀行預金が新たにプログラマブルになるのが望ましいだろう」(山岡氏)

 これが意味することは、2つの面から捉える必要がある。仮想通貨という観点と銀行預金という観点だ。

 まず仮想通貨の観点では、法定通貨である円と価値を連動させるために、銀行預金が裏付けになる。ステーブルコインと法定通貨の価値を連動させるには、裏付け資産を持つ方法以外にもアルゴリズムの利用などいくつかの方法がある。例えばドル建てステーブルコインの一つであるダイ(DAI)はアルゴリズムで価格を連動させているし、円建ステーブルコインの1つであるJPYコインは、払い込まれた円を供託する前払式支払い手段としてコインを発行する方法を採っている。

 DCJPYでは、最も確実なのが銀行預金だと判断した。「裏付け資産を持つことは規制監督上、乗り越えなくてはならない壁が高くなる。例えばUSテザーは裏付け資産が本当にあるのか、大議論になった。絶対に安全なアセットで持っているかが問われる。今の法制を前提とした場合、銀行預金をデジタルマネーに発展させる方法が一番早いだろう」(山岡氏)

 一方、銀行預金の観点で見ると、DCJPYを使うことで銀行預金をプログラム可能にできる。

 DCJPYはアカウントごとに同額の日本円が入った銀行口座とひも付いている。DCJPYの送金で資金が移動すると、その裏側では、裏付け資産である銀行預金も同時に移動する仕組みだ。「DCJPYは二層構造になっており、二層目のところで『AからBへこの残高を移行する』といった支払指図を作る。それと自動的に連動する形で、銀行預金も移動させられる」(山岡氏)

単にブロックチェーン上でバリューが流通するのではなく、ひも付いた銀行預金口座でも同時に送金が行われるのがDCJPYのキモだ

 DCJPYはプログラムに従って決済できるので、そこに銀行口座預金が連動することで、実質的に銀行預金がプログラム可能になるというわけだ。

 ちなみにDCJPYの送金の都度、銀行預金も送金していては処理が膨大な量になってしまう。一定の送金を束ねて動かすなど、いくつかの仕組みも取り入れている。あたかも銀行預金のレイヤー2としてブロックチェーンが動作しているようなイメージだ。

 このように、銀行預金を活用してステーブルコインを発行したという側面だけでなく、ブロックチェーンを使って銀行預金をプログラム可能にしたという点が、DCJPYの面白いところだ。

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