「働かないおじさん」と本気で向き合い、解決するには「働かないおじさん問題」のニュータイプ化(3/4 ページ)

» 2022年03月14日 07時00分 公開
[難波猛ITmedia]
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3.話すより聴く(傾聴)

 「フィードバック」というと「伝え方」「言い方」が大事だと捉えられがちですが、「聴き方」の方がはるかに重要です。

 人間には【一貫性の法則】があり、「言ったことと行動が矛盾したくない」と考えます。相手から一方的に言われたことは否定しやすくても、自分が言ったことは守りたくなります。

 上司は、耳に痛いことを伝えた後は本人の意見を真摯(しんし)に傾聴し、「これ以上は言うことはない」「本音の全てを言い切った」という状態まで付き合いましょう。

 例えば、「あんな会議は時間の無駄」と主張する部下がいた場合、どこが無駄だと感じているのか、どうしたら意味のある会議にできるのか、本人に話をしてもらい、自分事として考えてもらいます。

 自分で考えて解決策を選ばせると、部下も「自分で言ったからには」という心理が湧きやすくなります。

 上司が徹底的に傾聴すると、部下の心に、自分の気持ちを吐き出せたことによる解放感(カタルシス効果)と、時間と感情を共有してくれた相手に好意を抱く単純接触効果(ザイアンスの法則)が生じます。

 「この上司は、自分の意見を最後まで真剣に聴いてくれる」と感じると、アドバイスを今までより素直に受け入れるようになります。

 上司側のまずい対応として、「しゃべりすぎ」があります。上司が過剰にしゃべりすぎると、部下がじっくり考える時間が持てません。

 少しの沈黙にも耐えきれず、部下の心理を無駄に先読みして話し始め、沈黙を埋めようとする上司もいます。しかし、部下に考える時間と機会を与えない限り、フィードバックのボールが相手に渡ったことになりません。

4.行動と事実について話す(ファクトベース)

 経営者や上司から、「責任感が不足している」「受け身でなく主体性を持ってほしい」「協調性に欠けて困っている」などの相談を受けます。

 こうした「性格・意識」への指摘や指導は、2つのリスクがあります。

  • 1.パワハラになりやすい

 性格や人格を否定して「人格権の侵害」と受け止められる言動は、パワーハラスメントの「業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為」に該当する危険性が高くなります。

  • 2.改善につながらない

 「性格・意識」にフォーカスを当てていると、具体的な解決策につながりません。例えば、「責任感を持って仕事をしてほしい」と上司に言われたとしても、当人には「責任感のある仕事」が分かりません。

 「責任感がない」と感じたのであれば、上司自身が「いったいどういう行動や事実を見て責任感の欠如と判断したのか」を掘り下げ、その行動・事実に基づいて話し合うことが重要です。

 また、行動変容を促すには、「良い点は褒める」「悪い点は指摘する」姿勢も重要です。

 「良い行動は定着するまで何度も褒める」「悪い(不足している)行動は変わるまで何度も指摘する」根気強さが求められます。

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