ロシアからの石油や天然ガスが途絶えても、米国のシェールオイルがカバーできる?高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)

» 2022年03月15日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

より効率の高いエネルギー利用と多様性が重要

 なお、原油価格が上昇することで生じるメリットも無いわけではない。その代表的な例が、代替燃料の実用化が早まる、ということだ。

 例えばバイオ燃料の価格は、取り組みが始まった20年前から15年前あたりまでは、単価はガソリンの10倍といわれ、とても普及が望めそうなものではなかった。しかしそこから研究開発が進み、7、8年前あたりからは微細藻類の培養による油の精製でガソリンの3、4倍のコストでの実現が見えてきたといわれている。

太古から存在する植物の一種である微細藻類。沼や池などで発生するアオコも藻が大量発生した現象だ。地球上に2000種類を超える種が存在するといわれており、その中でも細胞内に油を溜め込む種がいくつも発見されている。それぞれに特徴があり、バイオ燃料に最適な種と培養方法を巡って研究開発が続けられている

 非常に安定した物質である二酸化炭素を一酸化炭素にして、酸素ではなく水素と結び付けて、液化させるという合成燃料より、微細藻類由来の油を精製するバイオ燃料の方がはるかに効率が良い。水素が本格的に使える原料となるのは、再生可能エネルギーによる発電が主力となり、その電力で水を電気分解して取り出す水素が使えるようになってからだ。

 一方の微細藻類によるバイオ燃料を普及させるには広大な培養池が必要であり、日本国内で必要量を生産することは難しい。しかし海洋性の藻類であれば海上で培養することも可能となるし、海外の広大な国土を利用して培養する手もある。

 しかもガソリンの3、4倍というエネルギーコストが実用化への障壁の1つなのだから、ガソリンの価格が高騰すれば、その差は自然に縮まってくる。その上で、量産化によりコストダウンが進む。そして普及することで増産体制となりスケールメリットが価格をさらに引き下げることも期待できるのだ。

昨シーズンのスーパー耐久選手権にクリーンディーゼルエンジンを搭載したデミオをバイオ燃料仕様に改造して参戦したマツダ。今シーズンはマツダ2にマシンを改めてフル参戦。バイオ燃料の可能性を探りながら、研究開発を進める計画だ(写真:マツダ)

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