今回、ワイン販促チームが主に活用したのは、ふらのワインのオンラインショップの販売データ。このデータを基に、顧客の属性を分析し、そこから購入パターンを探った。すると、1回きりの購入者とリピーターでは次のような違いがあった。
1回きりの購入者は、少量タイプの360ミリリットルを買う割合が4.4%だったのに対し、リピーターでこの商品を購入したのは全体の1.2%程度で、両者の間には3倍以上の開きがあった。また、1回きりの購入者が買うアイテムは、ふらのワインの主力商品である「ふらのワイン」シリーズと、「羆(ひぐま)の晩酌」が突出していて、それ以外はほぼ横並びだったのに対し、リピーターでは、「シャトー」や「ツバイゲルトレーベ」といった高価格帯ワインの売り上げも大きかった。
「リピーターは、同じ銘柄を何度も飲むというよりも、いろいろなものを試したい傾向にある」と、学生たちは仮説を立てるとともに、いかにして商品の試し飲みのハードルを下げるかを思案した。実際、学生たちが富良野市の担当者にリサーチしたところ、試飲と購入には相関性があって、ワイナリーや物産展で試飲した商品は必ずといっていいほど買って帰られるそうだ。
ただし、現状の商品展開だと、少量タイプは限られており、試し飲みする機会が提供されていない。それを補うために、学生たちは「オンラインショップでの試飲セットを販売すべきだ」と提案した。
これに対して、ぶどう果樹研究所の川上所長は、「取引先などを回ると、コロナ禍での家飲み増加によって小さい瓶が求められるようになったとよく聞きます。実は小さいサイズも売っているのですが、もっと前面に出してもいいかなと思いました」とコメントした。
同研究所業務課の赤松靖主幹も、「購入者をモニタリングできていないのは研究所の課題です。もっとデータを駆使して、消費者ニーズを探っていきたい。今回の提案も経営戦略の参考にしたいです」と大きくうなずいた。
現場からある程度の同調が得られたとはいえ、今回の提案が完全なものとは言い難い。それには理由がある。学生たちの使えるデータが限られていることだ。
「個人情報保護の観点から顧客の氏名や住所などは公開されなかったため、同じ購入者かどうかは識別できませんでした。また、小売先の販売データももらいましたが、データ形式が異なるため活用できなかったです」と、学生の一人は残念がる。
学生が指摘するデータ形式というのは、PDFをはじめ、基本的にそのまま加工できないデータのことである。利用するには人力でデータを入力し直すなどの作業が必要となる。これはデータ活用に関して、多くの自治体で散見される課題であり、富良野市も自覚していた。今回の提案を受けて、オープンデータの重要性をあらためて感じたと、ある担当者は述べていた。
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