九州と北海道 2つの高級クルーズ列車は、リピーターを獲得できるのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/10 ページ)

» 2022年04月16日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

1泊2日60万円の「ほぼ乗るだけ」コースの価値

 運行コースは3泊4日が2つと1泊2日が1つ。こちらもリニューアルされた。コース変更はリピーター獲得には欠かせない要素だ。

 3泊4日コースの22年10月〜12月は霧島コースとして南九州を巡る。博多〜由布院〜大分〜(車中泊)〜熊本〜肥薩おれんじ鉄道〜霧島温泉(泊)〜嘉例川〜えびの〜宮崎〜(車中泊)〜豊後竹田〜阿蘇〜熊本〜博多。肥薩線不通の影響もあってかなり変わった。初めて吉都線に乗り入れる。旅行代金は2名1室1名当たり125万円〜、1名1室は270万円。

 3泊4日コースの23年1月〜2月は雲仙コースとして、北九州と西九州を巡る。博多〜由布院〜大分〜(車中泊)〜阿蘇〜熊本〜(フェリー)〜島原港〜雲仙温泉(泊)〜温泉滞在または島原鉄道乗車〜諫早〜長崎〜鳥栖〜(車中泊)〜小倉〜別府〜大分〜博多。熊本〜島原間のフェリー乗船が新しい。旅行代金は2名1室1名当たり115万円〜、1名1室240万円。

 1泊2日コースは22年10月〜23年3月に設定された。1泊2日コースとして初めて南九州に向かう。博多〜熊本〜肥薩おれんじ鉄道〜鹿児島中央〜(車中泊)〜宮崎〜佐伯〜大分〜博多。牛ノ浜・延岡・佐伯・大分などで長時間停車するとはいえ、ほとんど乗りっぱなしの2日間。見どころのひとつに「肥薩おれんじ鉄道区間で夕陽を眺めつつ夕食」がある。旅行代金は2名1室1名当たり65万円〜、1名1室150万円。

 1泊2日の乗りっぱなしの旅で65万円はかなり贅沢だ。しかし、世の中には可処分所得は多いけれど、それだけに仕事の責任は多く遊ぶ時間が少ないという顧客層はある。一方、不労所得があって休みが多い人にとって、3泊4日コースはお手軽なパッケージだ。

 JR九州は、これらの顧客層を発見した。しかも、乗車した人々を対象としたパーティーを開催するなど、リピーターのハートをつかんでいる。「ななつ星in九州」の登場まで、このようなサービスは日本の鉄道業界にはなかった。

九州をほぼ一周する「1泊2日コース」(出典:JR九州、報道資料)。ちなみにほぼ同じコースを観光列車「36ぷらす3」で乗り継ぐと約9万円になる

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