JR九州は4月8日、クルーズトレイン「ななつ星in九州」のリニューアルを発表した。2022年10月からのコースに適用される。
観光列車のリニューアルというと、運行経路や立寄り観光地の変更や食事メニューの一新である。しかし「ななつ星in九州」は車両もリフォームする。先駆者の気概を感じる。
「ななつ星in九州」は、客車の内装に木製の調度品など天然素材をふんだんに使っている。いまや当たり前のようでいて、実はかなりおカネがかかっている。なぜなら、鉄道車両の難燃化基準はとても厳しいからだ。
1951年に木製電車が全半焼して100人以上が焼死した桜木町事故以来、鉄道は火災事故が起きるたびに対策として難燃化基準を整えてきた。店舗内装などとは違い、木材をそのまま使えない。
「ななつ星in九州」をはじめ鉄道車両デザインで活躍する水戸岡鋭治氏は、自然素材の心地良さにこだわっている。木材の難燃化対策のために、長期間かけて乾燥したうえで、また長時間掛けて難燃剤に浸す。
真空加圧処理で時間を短縮する方法もあるとはいえ、生木を使うより手間がかかる。こうした素材処理によって、木材は腐食もせず、鉄道車両とほぼ同じ寿命を全うできる。
そもそも素材の良質の木から探し出す必要がある。図面を引いたらすぐに組み立てられるものではない。車両の組み立てよりずっと前から準備が必要だ。
そこまでつくり込んだ造作をたった9年で改装する。なんと贅沢(ぜいたく)な……そしてもったいない。報道発表会に同席した水戸岡氏も「まさか9年でリフォームするとは思わなかった」と語った。
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