九州と北海道 2つの高級クルーズ列車は、リピーターを獲得できるのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/10 ページ)

» 2022年04月16日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

もはや北海道のプライド「THE ROYAL EXPRESS 〜HOKKAIDO CRUISE TRAIN〜」

 東急は17年から横浜〜伊豆急下田間で高級クルーズ列車「THE ROYAL EXPRESS」を運行している。伊豆急行の展望車両「リゾート21」を改造した車両だ。

 内外装は「ななつ星in九州」を担当した水戸岡鋭治氏が手がけた。木材など天然素材を使った心地良い空間というコンセプトだ。ただし日中利用を前提にしているため個室はなく、全体的に開放感がある。リゾートホテルのロビーという印象だ。

2号車の一部は海の車窓を楽しむために、座席は海側を向いている。改造前の「リゾート21」の理念を継承した(この車両はHOKKAIDO CRUISEには連結されない)
ゆったりと座れる肘掛け付きの椅子。自然素材のこだわりでブラインドも木製のすだれだ

 8両編成で、構成は1号車に展望席とお子さま用の遊び場、3号車にマルチカー(イベントなど多目的室)、4号車にキッチン、5号車と6号車はダイニングカー、8号車に書斎風ライブラリー。1号車、2号車、7号車、8号車は向かい合わせ2〜6人用座席になっている。

 座席数としては定員100名となり、観光列車としては大規模だ。しかしすべての座席を埋めるわけではない。ツアーは最大15組で募集されており、30〜50名程度で利用する。リビング、ダイニング、ライブラリーなどは共用の空間になる。

8号車の運転台直後は図書席になっている
幼児向けの「木のプール」は水戸岡鋭治デザインで採用例が多い
3号車「マルチルーム」はイベントなど多目的に使える。化粧品メーカーの新製品発表会で使われたこともある。今回の北海道クルーズ発表会もここで行われた。椅子は取り外し可能で、床にチェーンでつながれている(この車両はHOKKAIDO CRUISEには連結されない)

 横浜〜伊豆急下田間の乗車時間は約3時間半。ツアーはこの区間の食事付き乗車プランと、伊豆の宿泊観光、一部にJR東日本のサフィール踊り子を組み合わせたクルーズプランがある。

 「THE ROYAL EXPRESS」は、横浜と伊豆観光を結ぶ架け橋だ。そして、自社の沿線に観光地を持たない東急電鉄にとって、観光地にある子会社の伊豆急行を結ぶ。沿線価値を高めるための戦略的な列車ともいえる。

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