九州と北海道 2つの高級クルーズ列車は、リピーターを獲得できるのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(10/10 ページ)

» 2022年04月16日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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国内旅行はいまが商機

 「ななつ星in九州」「THE ROYAL EXPRESS 〜HOKKAIDO CRUISE TRAIN〜」のリニューアルは、国内観光需要の盛り上がりに向けた対応だ。どちらももともと定員が少なく個室中心だから三密(密閉・密集・密接)の恐れはない。ほかの観光列車も、定員を減らして運行すればウィズコロナにふさわしい旅行形態になる。

 定員を減らせば売り上げは減るので、そこは単価を上げていくしかない。鉄道運賃は上限運賃制度があってすぐには値上げできない。特急料金なども許可を得る必要がある。しかし観光列車のツアーという形態は単価を上げやすい。

 そうかといって単純な値上げは参加者が納得しない。知恵と手間をかけて、上質なサービスを提供する必要がある。それがリピーターだけではなく、新たな参加者を獲得する仕掛けになるだろう。

 ウィズコロナが続いていて、アフターコロナが見えない今、海外旅行には行きづらい。円安もあって、海外旅行を嗜好(しこう)する人々は目的地を失っている。そんないまだからこそ、国内の高級クルーズトレインに商機がある。10年代に大量に誕生した観光列車たちも、新たな展開を迎える時期に来たといえそうだ。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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