Slack越えの最速成長、グローバル人材市場を変革するSaaS企業ディールとは(2/6 ページ)

» 2022年04月28日 05時00分 公開
[早船明夫ITmedia]

グローバル人材の雇用を阻む労務管理とは

 あなたがあるビジネスで海外展開を任された場合を想像してほしい。海外で人材を雇う場合、どのような手続きが必要になるだろうか。

 まずは賃金や保険、福利厚生を会社として保障するために、その国の労働法や社会保障制度に基づいた雇用契約を交わすことになる。そして税制に従って所得税などを差し引き、従業員に給与を支払う必要がある。

 これらの法制度は国ごとに異なるだけでなく頻繁に改定されるため、労務コンプライアンスの管理は大変煩わしく、意図せず現地法違反となる事象も発生している。

 これまで一定規模で海外進出に乗り出す場合は、現地法人を設立して派遣駐在員や現地採用のスタッフを通じて直接雇用してきた。当然それには時間やコストがかかるため、海外拠点数を増やすことも簡単ではなかった。

 また法人を設立しない場合には、雇用関係に該当しない業務委託契約をワーカーと結ぶのが一般的だ。そのケースでも法制を順守した契約や給与支払いが求められるため、地域ごとに法律・会計事務所やコンサルティング事務所などの専門家のサポートが必要だ。

 「これらの領域では既存のマーケットとして、人事関連業務のアウトソーシング、すなわち雇用代行を行うPEO(Professional Employer Organization、習熟人財雇用組織)という市場が存在する」(中島氏)

 だが、このPEOサービスにはいくつかの問題がある。

 まずPEOを利用しても、企業はコンプライアンス管理における法的責任を問われるリスクがある。代行業者は労務関連の業務を引き受けるが責任は肩代わりしないため、海外での雇用に関して企業としてもガバナンスの観点から完全に手離れできない。

 また5〜10人以上の共同雇用を前提とするのが一般的で、手数料を15〜20%を支払う必要がある。中小企業にとっては負担が大きいのが実情だ。

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