――リモートワークが進むなど、企業はコストを削減するためにオフィスを減らそうとしています。その潮流の中で、どんな観点から新しいオフィスづくりを提案しようとしていますか。
当社独自の「スマートオフィスコンセプト」を持っていて、これはテクノロジー×デザインでワークプレース・スタイルを変革しようというものです。しかし、経営者からすると、この変革のコンテクスト(文脈)は働き方改革です。
出社する人数が減ったのでオフィスのフロアは削減するでしょう。しかし、オンラインで仕事ができることが分かり、そのことでメンタルの不調を訴える人も増えています。シニア社員はいいのかもしれませんが、若手は教育してもらう機会が必要な状況もあるでしょう。
経営陣はあるタイミングで社員に出社してほしいと思ったときに、会社に来るのが魅力的でワクワクするようなオフィスを作る必要があります。われわれとしては、テクノロジー×デザインというやり方でオフィスを作り、経営者が求めるパフォーマンス、エンゲージメントの向上を体現しなければなりません。
――「スマートオフィスコンセプト」とは、具体的にどんなものなのでしょうか?
「スマートオフィスコンセプト」は、いまは「オフィス3.0」イコールDXだと言い始めています。最初の「オフォス1.0」は、オフィス家具の製造と販売で、差別化要因は品ぞろえや価格競争でした。しかし価格の値下げによるチキンレースで疲弊します。それが「2.0」になると、いかに付加価値を付けられるかになり、より価値のあるオフィスの設計・構築が求められるようになりました。
イトーキでは約150人のコンサルタント、一級建築士、空間デザイナーを抱えています。また、ワークスタイルを変えていく上で方法論となるものがあったほうが良いので、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)の創始者であるオランダのヴェルデホーエン(本社アムステルダム)とも提携しています。
さらに「3.0」になると、デジタルが入ってきたこともあり、商材としてデジタルを掛け算して提供することを考えています。具体的には、イトーキが提供するオフィス什器(じゅうき)がIOTデバイスになれば、いくつものデータを捕捉することができます。
――社員の動きが全て把握できるオフィスシステムを作られたそうですが、そのメリットは何でしょうか。
IOTセンサーを活用してオフィス内での社員の位置情報をリアルタイムで把握できる「Workers Trail」(ワーカーズトレイル)というアプリケーションをリリースしました。株式会社WHERE(東京都千代田区)のIoTセンサーをオフィス什器のいたるところに設置し、これをスマートフォンなどで検知するのですが、オフィス内の社員の動きを見える化することで、働き方に関してより有意義なデータを取ることができます。
オフィス什器をIOTデバイスと考えることで、他社が取れないデータを取れるのがポイントです。社員の動きだけでなく、椅子にどれくらい座っていたか、といった人間工学的な生体情報も取れるなど、可能性が広がります。
昨年の11月からこのシステムを発売し、顧客から問い合わせも来ています。まずは、当社のオフィスにこのシステムを実装して自社データを蓄積し、顧客に対してエビデンスを提供して販売につなげていきたいと考えています。
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