中央省庁が自治体向けの施策を進めたり、独自の取り組みを進める自治体がある一方で、前述の総務省の調査結果のように、都道府県と小規模な市区町村では格差が生じている。ここまでの格差が生じる要因を突き詰めて考えると、結局はその自治体の意識の差ではないかと考える。要するに「やる気があるか・ないか」という一点に尽きるというのが、記者の持論だ。
記者がこうした考えに至った背景には、過去の取材経験がある。ここで行政側の実態を説明するエピソードとして、過去に取材した霞が関と大規模自治体職員の生の声を紹介しておきたい。取材した職員は、いずれもDX推進のため、民間のIT企業から行政職員に転身した経歴を持つ。
「役所は自分が責任を取りたくないから、できない理由ばかり考えるのが癖になっている。国民や住民のために、どうすればできるかを考えるべきで、マインドセットから見直す必要がある」。2人の職員は自治体DXの推進について、こう口を揃える。
2人の発言に思い当たる節がある。コロナ禍真っ盛りの20年3月ごろ、有識者会議のオンライン開催に関する記者の取材に、60歳前後のある大規模自治体の局長級職員が「自分もオンラインの方法がよく分からないし、有識者は高齢者が多く、Web会議ツールを使いこなせないから対面形式を採用している」と発言した。これを聞いて、絶句したのを昨日のことのように覚えている。
分からないながらも、新しいことに積極的に取り組み、対応できない人がいればサポートするというのが本来の組織のあるべき姿ではないか。その有識者会議には高齢者だけでなく、30〜40代の人もいた。ましてや、当時はコロナの全容が分かっていなかった上、日々の陽性者数も急増しており、今後の動向が不透明な時期だった。
政策立案に影響を与える有識者会議のオンライン開催の可能性が、デジタル分野に疎い人材の「できない」という思い込みのせいで、ついえた瞬間だった。
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