「Internet Explorer」サポート終了で、東京・調布市「なんで急に」報道 自治体DXに必要な“たった1つ”のこと(7/7 ページ)

» 2022年06月18日 07時00分 公開
[樋口隆充ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6|7       

企業のDX推進は15.7% 帝国データバンク調査

 ただ、自治体側にばかり問題があるわけではない。企業側にも同様のことがいえる。帝国データバンク(TDB)が1月に発表した「DX推進に関する意識調査」(全国2万3826社が対象)では、DXを推進する企業が15.7%と7社に1社程度にとどまった。

photo

 規模別では「大企業」が28.6% と全体(15.7%)を大きく上回る一方、「中小企業」は13.0%となり、総務省の自治体調査同様、大企業と中小企業の間で格差がみられた。

photo

 TDBが3月に発表した「DX推進に関する企業の実態」では、さらに踏み込んだ結果が出た。DXに取り組む企業の社長の年齢に着目したところ、「39歳以下」が20.1%で最多。全体(15.7%)を4.4ポイント上回った。最下位は「70歳以上」で12.2%だった。

 TDBは「『39 歳以下』の社長はパソコンやインターネットが普及した時代に育った30代と、デジタルが当たり前の時代に生まれた20代が含まれるため、比較的デジタルに慣れ親しんでいる傾向にあると考えられる」と分析している。

photo

 DXに取り組む「企業の年齢」では、「創業・設立5年未満」が25.0%で最多で、「40年以上70年未満」が最も低く、14.2%だった。

photo

 こうした結果に対しTDBは「DXに関する理解や取り組み状況は、企業規模や地域のみならず社長年齢や創業・設立年数別においても格差が表れている」としている。

年間12兆円の経済損失の可能性 経産省がDXで試算

 経済産業省は18年9月発表の「DXレポート」で「複雑化・ブラックボックス化した既存システムを使い続け、2025年までにDXが進まなかった場合、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と指摘。これを「2025年の崖」と呼び、警鐘を鳴らしている。

photo 経産省が指摘する「2025年の崖」(出典:経産省の「DXレポート」)

 行政サービスの中には、事業者側が旧来型の手法を使っているために、自治体側が制度を廃止できないケースもあるだろう。紙での申請が最たる例だ。DX推進は官民問わず、危機感を持って取り組む必要がある問題だ。

現実直視で”オワコン化”に歯止めを

 若者の都市部への人口集中が叫ばれて久しい。コロナ禍でテレワークが浸透し、多少の変化は生じたかもしれないが、都市部への人口流入傾向は根強く、これをひっくり返すのは難しいレベルだ。

 若者が都市部に行く大きな理由として交通機関の充実などを含めた「利便性の高さ」がある。利便性の高さは企業にとっても重要で、多くの企業が東京や大阪にオフィスを構えるのはビジネスがやりやすいからだ。このため、仕事を求める若者が都市部に集中。地方の人口が減少し、地元企業も人手不足によって衰退する。

 企業誘致などにも失敗し、過疎化に悩む自治体にはそれ相応の理由があり、そうした“オワコン化”(「終わったコンテンツ」を意味するネットスラング)の一根源に、前例踏襲型の古い役所の慣例があることをまずは自覚する必要がある。

 中央省庁や外部の力を借りつつ、現実を受け止め、他責思考で、できない理由ばかりを考えるのではなく、スピード感を持って、できることから少しずつ実行するといった思考変化が、自治体DX推進、そして地方自治体の未来のために求められる。

前のページへ 1|2|3|4|5|6|7       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.