学費は「出世払い」で エンジニア養成校「CODEGYM」が取り組むISAとは?金融ディスラプション(5/5 ページ)

» 2022年07月04日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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法的な位置付けがあいまいなISA

 期待のISAだが、実は国内でのISAの法的な位置付けはあいまいだ。まず銀行やノンバンクが行う教育ローンの貸付は銀行法や貸金業法で定義されるが、ISAでは金利が決まっておらず、貸金業には当たらない。では、買い物の対価を分割で支払う際に使われる割賦販売にあたるかといえば、そもそも支払い額が確定していない。

 「国内での事業参入にあたっては、複数の法律事務所とリーガルの観点から整理を行い、関係省庁にも確認を行ったが、現状では解釈可能な法制度がないため、事業者として消費者保護を第一に、新しい産業と制度をどのように作り上げていくかが重要」だと鶴田氏。

 そもそも貸金業法にせよ割賦販売法にせよ、常識外の高金利を課したり、返済不能なほどの額を貸し付けることを禁止する、消費者保護が根本の考え方にある。そのため、先行する米国でも当初は事業者内の自主規制的に、大枠のルールが整っていった。「米国でのISA法案をみると、支払い率を最大で給与の15%までにしようとか、ISAでの支払いが始まる所得水準の下限額の考え方や、総支払額の規定などが触れられている」(鶴田氏)

 CODEGYMのISAでもこれら米国での先行事例を参考に、給与の10%、支払期間は30か月間、最大支払額は99万円という設定で現在運営している。

 鶴田氏が長期的に目指すのは、国内でも法的な位置付けが明確になることと、ISAのプラットフォーム化だ。ISAを提供する事業体を用意し、CODEGYMというスクール事業と切り分ける。その上で、他の教育機関にもISAを提供する考えだ。

 「スクールに格付けを行い、受講生に良い教育を提供しているならISAを安いコストで提供する」(鶴田氏)ことを想定している。

 ISAニーズがある業界はエンジニア養成スクールだけではない。資格予備校や語学学校、海外留学なども対象となるだろう。ISAの仕組みは、人手が不足していて、比較的生涯年収が高く、かつ学び直しによってそのキャリアが実現する職種と相性が良い。その一例としては、自動車整備士などが挙げられる。国家資格を取得するスクールに通う必要があるが、業界では人手が不足しており、年収は20代でも500万円を目指せる。

 さらにその先には、ISAをファンドとして運営し、学生を支援するとともに投資家からの資金を運用するという構想も持っている。

 弱冠31歳の鶴田氏だが、実はLABOTが3社目となるシリアルアントレプレナーだ。20歳のときに開発した「すごい時間割」をリクルートキャリアに1.3億円で売却、23歳でゲームエイトを設立しGunosyに3億円で売却。さらに25歳で「ブクマ!」を開発し、チームごとメルカリに買収され、新規事業担当のグループ会社執行役員を務めたという経歴を持つ。

 現代的な成功を絵に描いたような鶴田氏だが、起業家として生涯をかけられる大きなテーマの事業を続けたい、と語る。「これまで作ってきたものは、世の中の仕組みを変えられるほどのインパクトには至らなかった。ISAは本当に教育の価値観を変えるかもしれないという想いで、長期的な視点で向き合っていきたい」

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