このような顧客関係性の中で、どのようにして顧客体験価値を上げていくべきなのか。その際は、「体験価値の5つの要素」から考えてみるのが良いだろう。
「RELEVANCE:私向けのものだと思える」「EASE:私にとって意味がある」は、主に機能的な価値が中心となるが、自分の考えや価値観と合うかどうかという情緒的な価値も含まれている。「OPENNESS:オープンで正直である」「EMPATHY:私の立場で考えてくれる」は、信頼できて表裏のないブランドか、顧客の立場に立ってくれるかといった顧客に対する姿勢からくる体験価値である。「EMOTIONAL REWARDS:いい気分にさせてくれる」は、最終的にどのような感情になったかという体験価値である。その際、「良い体験をした」というプラスではなく、「損をしたと思うことがない」というネガティブな体験がないかが重要なポイントだ。顧客は「良い体験」をしても、それは一時的なよろこびにとどまり、あまり記憶に残らない。一方、「悪い体験」をした場合は、何年たっても鮮明な怒りとして、いつまでも記憶に残ってしまう。
こうした「体験価値の5つの要素」を競合や顧客タイプ別に比較することで、どのように顧客体験価値を向上できるかを検討できるだろう。最後に、この5つの要素が、CXスコアアップにどう貢献したか見てみよう。
今回のランキングでCXスコアを上昇させた22ブランドの体験価値5要素の上昇幅累計を見てみると、5つの要素の中でも「EMPATHY:私の立場で考えてくれる」が最も伸びていることが分かる。
今回ランクアップしたブランドは、コロナ禍で人とのつながりが希薄になる中、「私の立場で考えてくれる」という顧客体験価値により、顧客との関係性強化に成功したという共通項があった。
例えば、「自家製麺で常に打っているので、こしやのど越しを求める私たちをよく理解して、(商品を)提供してくれている」という意見があった丸亀製麺(1位)、「顧客の多くが望む、夢や希望、期待を満たせるようなテーマ設定をして、実際にそれに沿った価値を提供している」という意見があったディズニー(6位)、「即席麺など手軽に食べられるのに、栄養素、健康を加味して、おいしさも忘れていない」という意見があった日清食品(20位)は、いずれも「私の立場で考えてくれる」という体験価値の伸びが最も高かった。
次回以降では、特定の業界ごとに顧客体験価値をアップさせた具体的なブランドの内容を紹介していく。
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