深刻な人材不足 優れたCXO・社外取締役はどこにいるのか?役員改革が始まった(1/2 ページ)

» 2022年07月15日 07時00分 公開
[柴田彰ITmedia]

最終回(前編)

最終回(中編)

 今回が最終回ということで、前編中編で社外取締役と執行役員を巡る現状について話を進めてきました。両者には監督と執行という立場の違いこそあれ、どちらにも共通しているのは、その役割を担うことができる人材の不足です。

 もちろん、社外取締役と、CXO体制を念頭に置いた執行役員とでは、人材に求められる資質や能力は異なっています。しかし、求められる要件を兼ね備えた人材を今まで企業側が育ててこなかった、という点において違いはありません。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 執行役員は良いとして、社外取締役の育成まで企業の責任なのか、という議論はあるかもしれません。ただ、社外取締役の多くはかつて企業の経営者か一役員だった、あるいは現役の経営者か役員ですので、やはり人材の育成は企業サイドの努力に大きく関わってきます。

 社外取締役と執行役員の人材プールを充足させていくカギは、人材の流動性を高めることにあると思います。人材の育成において、最も育成効果が高いのは経験を通じた学習であることは論をまたないところです。社外取締役、CXOを担える執行役員の育成では、それらに該当する経験を積ませることが一番の近道です。特に現役の執行役員と、その候補に対していかに良質で多くの経験を積ませるかが、大事な論点になります。なぜならば、彼らこそ将来の社外取締役の有望な候補人材だからです。

 社外取締役の中には、企業経営に携わる人以外にも、学者や弁護士などといった属性の人たちも含まれています。ただし、コーポレートガバナンスコードでも要請されているように、今後はより経営経験を持った人材が社外取締役には求められてきます。そう考えると、企業経営の中心にいる現役の執行役員層の強化こそが、将来的な社外取締役の人材プール拡大に直結するのです。ただ、現役の執行役員とその候補に良い経験を積ませよと言っても、1社のなかだけでは限界があります。

 高い視点から経営を俯瞰し、変革をも体験できるポストが、1社のなかにそれほど存在しているわけではありません。従って、1社に閉じたキャリア形成では、人材を育成するには限界があります。一企業にとっては、優秀な人材の社外流出は決定的なダメージとなります。しかし、日本全体を考えると、現職の役員、また将来の役員候補の人材流動性を高めていかなければ、人材プールを増やしていくことは難しいのが事実です。

 日本では、役員クラスの人材流動性はまだまだ低いレベルにあります。筆者が所属するコーン・フェリーはエグゼクティブ・サーチ業も営んでいるため、その流動性の低さについて身をもっていうことができます。

 とはいえ、ここ数年で徐々にではありますが、日本企業が社外から執行役員クラスの人材を招へいする事例が増えてきてはいます。執行の長である社長を、いきなり社外から抜てきする企業も出てきています。ただし、欧米先進国に比べれば、まだまだ一部に止まっているのが現状です。

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