――映画の撮影期間はどのくらいですか。
安孫子: 3年間です。日程や光線の加減もありますし。何しろ運行本数が少ないですから、撮影チャンスは少ないですよね。毎日行くわけにもいかない。そういう意味で、もう写真と争うのはやめようと(笑)。
星: 映画の中でも描いていましたが、結局地域の人たちが只見線を応援したいという場面が「歳の神」です。柳津のどんど焼き。
――あれは只見線のために再現してもらってるんですね。
星: 1月15日に撮影しました。午後5時45分集合で、これは大相撲で横綱大関の出る時間なんですよ。本当はみんなテレビを見たい。でも集まってくれたんです。会津ではとんでもないことなんです。あの集落には50軒の家があるんですけど、1軒でも反対したらできないですから。
全員が只見線のためなら協力するって。横綱大関を見ないで集まってくれて成り立っているんです。役場が頼んだんじゃないからね。星賢孝に頼まれたぐらいで……。それは只見線に対する理解がなかったら絶対できない。皆が只見線のためだったら、ちょっと我慢して協力するんだという気持ちになってくれました。
――もう一つ僕が感動したのは、灯篭(とうろう)をたくさん並べる場面。とてもきれいなんだけど、大変な準備をして、でもお客さんが列車に乗ってなくて残念でしたっていう。あれはもうやらないんですか。
星: やりますよ、コロナで今できないだけで。
――あれは見たいです。もう絶対に現地で見たい。
安孫子: あれが映画をつくるきっかけになった場面なんですよ。あれで火がつきました、私は。
――本当にきれいで、スクリーンで見られて本当に良かったと思います。
星: しかも乗客が誰もいないんだよな(笑)。
――それは残念ですけど、逆に列車の窓がきれいに明るいっていう(笑)。
星: その前の年は乗客がいない所じゃなくて、列車自体が来なかったんですよ。われわれ、朝から600個並べてね。列車そのものが来ないんだもの(笑)。それでもわれわれはやるんです。
安孫子: そういう人たちの思いに打たれましたね(笑)。
――それはもう発信しないともったいないですよね。
安孫子: 涙が出そうでした。
――こういう形で只見線をきれいに撮ってくださったら、たぶんほかのローカル線もきれいにとってもらえるんじゃないかと期待してしまったんですが。
安孫子: 興味はありますよ
――オファーがあったら受けていただけますか。
安孫子: ぜひ!(後編につづく)
(c)ミルフィルム
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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