クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

セダンの再発明に挑むクラウン(1)池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/8 ページ)

» 2022年07月18日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

ついにクラウンがセダンを止める!

 さて、とりあえず最初は、何でこんなにクラウンが注目されているのかだ。やっぱり一番デカいのは「ついにクラウンがセダンを止める」という点だろう。

 前々から、あちこちで、セダンは絶不調みたいなことがいわれたきた。数年前までは、新型のセダンがデビューすると「セダンの復権に挑む」みたいな記事もよく見かけた。しかし、ここ数年もうそれすらいわれなくなって、なんとなくだが世の中的にはセダンはもはや危急存亡の秋だという気分があった。

 という中で、まさに日本を代表するセダンブランドとして、最後の最後まで抵抗を続けてきたクラウンが、ついに陥落ということになれば、それは象徴的な事件だ。東ローマ帝国が滅亡した「コンスタンチノーブルの陥落」か、南ベトナムの敗北を決めた「サイゴン陥落」みたいなもの。そしてセダンを愛する人たちからしてみれば「クラウンよお前もか」ということになる。

 さて、そもそもセダンとは何ぞやというのは、今回の新型クラウンの記事を書くときに避けては通れないテーマである。ここの部分は他の連載でも書いており、それらを既読の人には、もはや既知のことではあるのだが、まさかリンクだけ張って「他で読んで来い」とも書けないし、コピペというわけにもいかないので同じ話をもう一度書くしかない。

 セダンとは、クルマに求められる多くの性能を兼ね備えた高バランス商品であった。そこには大きく見て3つの要素がある。それがセダンの3ボックスの形を決めてきた。セダンはそもそも出自が欧州なので、日本では最初からあまり大事ではなかったこともあるが、そのあたりを解説していこう。

  • 大人4人とその荷物をしっかり乗せられること
  • 高速移動を可能にする低重心パッケージ
  • TPOを選ばないフォーマルなスタイル

 それらを補足する項目がある。荷物に関しては人と一緒くたに乗せないことが大事。要するに人と荷物はそれぞれ専用室があるべきだという考え方で、これが3ボックスのスタイルを生んだ。ユニットバスより、風呂トイレ別の方が高級というのと同じ考え方だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.