さて、とりあえず最初は、何でこんなにクラウンが注目されているのかだ。やっぱり一番デカいのは「ついにクラウンがセダンを止める」という点だろう。
前々から、あちこちで、セダンは絶不調みたいなことがいわれたきた。数年前までは、新型のセダンがデビューすると「セダンの復権に挑む」みたいな記事もよく見かけた。しかし、ここ数年もうそれすらいわれなくなって、なんとなくだが世の中的にはセダンはもはや危急存亡の秋だという気分があった。
という中で、まさに日本を代表するセダンブランドとして、最後の最後まで抵抗を続けてきたクラウンが、ついに陥落ということになれば、それは象徴的な事件だ。東ローマ帝国が滅亡した「コンスタンチノーブルの陥落」か、南ベトナムの敗北を決めた「サイゴン陥落」みたいなもの。そしてセダンを愛する人たちからしてみれば「クラウンよお前もか」ということになる。
さて、そもそもセダンとは何ぞやというのは、今回の新型クラウンの記事を書くときに避けては通れないテーマである。ここの部分は他の連載でも書いており、それらを既読の人には、もはや既知のことではあるのだが、まさかリンクだけ張って「他で読んで来い」とも書けないし、コピペというわけにもいかないので同じ話をもう一度書くしかない。
セダンとは、クルマに求められる多くの性能を兼ね備えた高バランス商品であった。そこには大きく見て3つの要素がある。それがセダンの3ボックスの形を決めてきた。セダンはそもそも出自が欧州なので、日本では最初からあまり大事ではなかったこともあるが、そのあたりを解説していこう。
- 大人4人とその荷物をしっかり乗せられること
- 高速移動を可能にする低重心パッケージ
- TPOを選ばないフォーマルなスタイル
それらを補足する項目がある。荷物に関しては人と一緒くたに乗せないことが大事。要するに人と荷物はそれぞれ専用室があるべきだという考え方で、これが3ボックスのスタイルを生んだ。ユニットバスより、風呂トイレ別の方が高級というのと同じ考え方だ。
- 日本のクラウンから世界のクラウンに その戦略を解剖する(2)
1955年のデビュー以来67年15世代に渡って、クラウンは日本国内専用モデルであり続けた。しかし国内のセダンマーケットはシュリンクの一途をたどっている。早晩「車種を開発生産していくコスト」を、国内販売だけで回収することは不可能になる。どうしてもクラウンを存続させていこうとすれば、もっと大きな世界のマーケットで売るしか出口がない。
- なぜ、そうまでしてクラウンを残したいのか?(3)
それほどの大仕掛けをしてまで、果たしてクラウンを残す意味があるのかと思う人もいるだろう。今回のクロスオーバーを否定的に捉える人の中には、「伝統的なセダン、クラウンらしいクラウンが売れないのなら、潔く打ち切ればいい。クラウンとは思えないクルマに無理矢理クラウンを名乗らせて延命する意味はない」という声も少なからずあった。
- SUVが売れる理由、セダンが売れない理由
セダンが売れない。一部の新興国を除いてすでに世界的な潮流になっているが、最初にセダンの没落が始まったのは多分日本だ。そしてセダンに代わったミニバンのマーケットを、現在侵食しているのはSUVだ。
- 見違えるほどのクラウン、吠える豊田章男自工会会長
2018年の「週刊モータージャーナル」の記事本数は62本。アクセスランキングトップ10になったのは何か? さらにトップ3を抜粋して解説を加える。
- え!? これクラウンだよな?
トヨタのクラウンが劇的な進化を遂げた。今まで「国産車は走りの面でレベルが低い」とBMWを買っていた人にとっては、コストパフォーマンスがはるかに高いスポーツセダンの選択肢になる可能性が十分にあるのだ。
- プレミアムって何だ? レクサスブランドについて考える
すでに昨年のことになるが、レクサスの新型NXに試乗してきた。レクサスは言うまでもなく、トヨタのプレミアムブランドである。そもそもプレミアムとは何か? 非常に聞こえが悪いのだが「中身以上の値段で売る」ことこそがプレミアムである。
- トヨタはプレミアムビジネスというものが全く分かっていない(後編)
前回はGRMNヤリスがどうスゴいのかと、叩き売り同然のバーゲンプライスであることを書いた。そして「販売のトヨタ」ともあろうものが、売る方において全く無策ではないか? ということもだ。ということで、後半ではトヨタはGRMNヤリスをどう売るべきだったのかを書いていきたい。
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