クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

セダンの再発明に挑むクラウン(1)池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/8 ページ)

» 2022年07月18日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

クラウンクロスオーバーのデザイン

 さて、16代目クロスオーバーはどうなっているのだろうか?

16代目となる今回のクラウン・クロスオーバー

 前後水平のラインはどうもよく分からない。側面視で薄く、低く、長く、水平に見えることを諦めて、リフトアップ、つまり車高を上げて、さらにウエストラインから下を厚くした結果、フロントフードとウエストラインの高さのズレは消えてスッキリした。

 だが、背の高いモデルの不安定感を消すために、タイヤに踏ん張っている力感を持たせたいので、リヤドアハンドルの上でウエストラインをキックアップさせて、真っ直ぐ水平は諦めた。のだろうと思うのだが、しかしキックアップしたラインは、そのまま後ろへ回り込む。ガーニッシュといわれるプラスチックパネルを使ってまでここを色違いにしているところを見ると、連続性に対するこだわりはあるようだ。

 ドアハンドルの下を通るハイライトを見ても、これがテールランプの角へ向けて走っているのを見ると、前後水平に走る上下2本のラインがリヤホイールの存在感によって歪められた形が、デザインのモチーフなのではないかという気がするが、そのあたりはいずれデザイナーに聞いてみたい。

クラウン・クロスオーバー

さて、ドアのオープニングラインはどうだろうか? この写真ではよく分からないかもしれないが、実車のドアを開けてみると、しっかり角まで開けてある。なので、15代目で一度諦めた一人前のセダンのパッケージに再度挑んでいることが分かる。

 ボディの成り立ちはそもそも欧州的なピープルムーバーと同じ、セダンをベースに大きなキャビンを乗せた形である。ただし2列シートの4座である(法的には5人乗り)。これによって敗色濃厚だったスペースについては一矢報いることが可能になった。

 合わせて、SUVに押されつつある「フロントの視点高さ」でも挽回を狙う。高く座った方が見晴らしが良い。そこも取りに行った。全体を通してみると、低いセダンの成り立ちにこだわったために引き算になった15代目の反省から、むしろミニバンやSUVの要素をセダンに足し算に切り替えた形がこのクロスオーバーであるといえる。

 形としてのセダンらしさを一度諦(あきら)めつつ、むしろ原点回帰して、もう一度セダンのあり方を考え直した。重心高が上がったことによるマイナスは、TNGA世代のシャシーのポテンシャルと横幅の拡幅によるアーム長の延伸で打ち消し、もう一度リヤスペースをセダンとして恥じないものに高める。それこそがこのクラウン・クロスオーバーの狙いである。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.