余談だが、シート高さのセオリーというものがあって、ボンネットの見切りラインに規制されて、前席のシート座面高さは決まる。シートだけ下げると前方視界が悪くなるので、ボンネットの高さに合わせて座面を設けることになるのだ。
これによって決まった前席乗員の高さより、後席は高く座らせないと前方視界が悪くなる。これも閉塞感の原因だから、それを防ぐために、劇場のシートのように、リヤシートの高さはフロントより高くなる。
図を見ても、おしりの位置が後席の方が少し高いのが分かるだろう。同時に頭上空間はリヤシートの方がどうしても苦しくなるのもご理解いただけるはずだ。そうなるとフロントより高いシートに座るためには、どうしたってルーフの高さとドアオープニングを高くとらなくてはならなくなる。
新型クラウンの室内パッケージ(クラウンカタログより)
ところが空力的にはルーフ高さの頂点は、できればBピラーあたりに持っていきたい。現代のクルマのパッケージングはこうした問題にどうリソースを割り振るかが課題になってくる。
そもそもエンジンの高さが低くなれば、ボンネットは低くなるので前席のヒップポイントを下げられ、頭頂部のクリアランスに余裕を持たせても、後席乗員を高く座らせることが可能になる。このあたりはエンジンよりもBEVの方が有利になるだろう。
新型クラウンの室内(提供 トヨタ)
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