鉄道貨物の諸問題解決が急務、運送業界「2024年問題」に備えよ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/10 ページ)

» 2022年08月19日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 JR貨物の公式サイトでは「お詫び」とは別に輸送状況が併記されている。これがかなり壮絶だ。8月15日福岡発の札幌行きの6時間46分遅れを筆頭に、東北方面は4時間以上の遅れが続出。17日札幌発の名古屋行き、東京(隅田川)行きは「停車中」。つまりどこかで停まったまま、発車の見込みが立たない。

 17日福岡発の東京(大井)行きは4時間35分遅れの予定だ。九州でも大雨警報が出ていることもあるけれど、東北地方から貨車が戻ってこなければ出発できない。機関車は全区間通しではなく、いくつかの区間でリレーしているけれど、それにしてもやりくりの都合がある。遅れてくる貨物列車のために待機させれば、遅れていない貨物列車の機関車が足りない。

 線路はJR旅客会社の保有だから、列車ダイヤも些細(ささい)な遅延が発生した場合も旅客列車が優先される。早朝に通過する区間に遅れようモノなら、通勤ラッシュが終るまで待たされる。JR貨物が旅客会社に十分な線路使用料を払っていれば上得意様として通してくれるかもしれない。しかし実際はアボイダルコストといって、ぶっちゃけレールの摩耗分くらいしか払わないルールになっている。

 JR貨物はそのおかげで低運賃の輸送サービスを提供しているけれども、旅客会社から見れば安い客は後回しだ。単価の安い客にはサービスレベルが低くなる。世の常である。

貨物列車は旅客列車が少ない深夜運行が多い。その時間帯は線路保守時間と競合する(出典:国土交通省、今後の鉄道物流のあり方に関する検討会 東海旅客鉄道資料
貨物列車の線路使用料は低額に抑えられている(出典:国土交通省、今後の鉄道物流のあり方に関する検討会 東海旅客鉄道資料

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