鉄道貨物の諸問題解決が急務、運送業界「2024年問題」に備えよ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/10 ページ)

» 2022年08月19日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 実は鉄道ファンの間で貨物列車好きは少数派だと思う。新幹線や特急列車はカッコいいし、ローカル線だって実際に乗れる。身近である。貨物列車だって機関車の活躍は力強く、JR貨物以降はデザインもカッコいい。コンテナだっていろいろな形がある。趣味性の高いシステムだけど、やはりマニアックだ。そもそも人目に触れる機会が少ない。特に大都市圏では旅客列車との競合を避けて深夜早朝の運行だし、通勤時間帯は遠慮して待機中だ。

 鉄道ファン以外の人にとっては、なおのこと縁遠い。まず生活で存在を意識することがない。貨物列車の輸送はB2B主体で一般消費者から見えにくい。個人向けに引っ越しなどのコンテナ輸送サービスもあるけれど知名度が低い。

 そして、実は荷主からも鉄道貨物は見えにくい。なぜなら、荷物の輸送手段について、荷主ではなく通運業者が選択するからだ。荷主が、A地点からB地点まで、大量のモノを運びたいと通運業者に依頼すると、通運業者はトラック、船、航空、貨物列車などさまざまな手段から、運賃、到着時間を総合的に判断して、最適な輸送モードを選択する。そこで貨物列車が選択されるか否か。

 例えば、あなたが通信販売サイトで購入した場合に、運送方法として貨物列車を選択できない。遠方から生ものなら航空便だ。そこでも航空会社は選択できない。トラック輸送で郵便が宅配便の選択ができる程度だろう。そもそも「○円以上の買い物は送料無料」しか関心を持たないと思う。私もそうだ。

 荷主が貨物列車を指定する場合は化学品のタンク輸送など少数の品目に限られる。特に化学品の液体はトラックで運んで万が一交通事故になった場合、大惨事になる。貨物輸送の利点は、スピードと価格だけではなく、鉄道特有の強固な安全運行システムである。

貨物駅以外の場所で足止めした場合は荷物を取りだせない(イメージ)

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