鉄道貨物の諸問題解決が急務、運送業界「2024年問題」に備えよ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/10 ページ)

» 2022年08月19日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

貨物輸送に対する社会の関心が小さすぎる

 通勤電車が障害で遅れる。あるいは運休すると朝のニュースで報じられる。雪で新幹線が遅れてもニュースになる。大雨でも特急列車が遅れるとニュースになる。しかし、同じ区間の貨物列車の遅れは報じられない。荷物が届かないと困る人がたくさんいるはずだけど、扱いが小さすぎる。

 同様に、幹線道路の渋滞不通は報じられるけれども、運送の遅延は報じられない。せいぜい宅配便が1日遅れ。荷物受付中止という程度だ。

 えちごトキめき鉄道社長の鳥塚亮氏はYahoo!ニュースで嘆いていた。

【関連記事】貨物列車が走れなくなると国が亡びる という危機感の共有について(Yahoo!ニュース、21年8月13日)

 この記事によると、貨物列車の遅延はもっと悲惨だった。

 8月13日現在、3日越谷発の札幌行きは9日8時間36分遅れの見込み。224時間36分遅れだ。2日浜松発札幌行きは盛岡で停車中。11日以上の遅れ。8日から9日にかけて札幌に向かう列車のほとんどが13日間も停車待機中で、目的地に着く目途が立っていなかった。

 積荷が野菜なら腐っていないかと心配だし、冷蔵コンテナも発電機がガス欠を起こしそう。実害も記事に触れられているのでここでは省略するけれども、私たちの生活に影響がある。先ほど書いた17日現在で、これほど大きな遅れはない。その理由は運休しているからだ。

 なぜ鉄道貨物輸送の障害は報じられないか。マスコミ視点では「世間の関心が薄いから、もっと関心の高い情報を優先する」だろう。ちなみに8月1日から16日までの新聞記事を横断検索したところ、JR貨物に関してはHBC北海道放送が「貨物列車が10日以上ストップ」と報じ、朝日新聞秋田県版が奥羽本線不通の影響として触れる程度。

 JR貨物関連の記事としては元副社長の岡田昌久氏の訃報が最多で全国紙が報じていた。担当部署が違うとはいえ、公器である新聞として、情報の重要度はこれでいいのか。バランスが悪い。

8月16日現在の貨物列車不通区間。東北本線、IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道を経由する臨時便を1往復出したけれど、輸送力は足りない

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