鉄道貨物の諸問題解決が急務、運送業界「2024年問題」に備えよ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/10 ページ)
石油タンク列車の顧客「日本オイルターミナル」「日本石油輸送」は共同で意見を述べている。石油列車は1日当たり40本を運行し、内陸向けの重要輸送モードで、長野・群馬・栃木県の需要に対して約80%を鉄道輸送している。要望についてはかなり専門的だ。要点を記すと、迂回(うかい)ルートの確保とパターン化、迂回(うかい)想定ルートの事前入線確認、機関車、タンク車の増備など。
喫緊の課題として、四日市コンビナートと長野県松本を輸送するルートについて、老朽化している機関車の更新が必要だ。しかし赤字ルートの上、数十億円のコストが必要になることから、JR貨物だけでは負担できない。利用者へ負担要請するも理解を得られず。18年に国交省に陳情したけれども、4年間も音沙汰なしだ。ここはもう要望というより悲鳴に近い。
11年の東日本大震災で東北本線が寸断された。まだ寒かったあのとき、横浜・根岸のオイルターミナルから貨物列車が東北に向けて走った。ふだんは貨物列車が走らない磐越西線を経由した。長い貨物列車をそこだけ2本に分割した。震災復興関連で、多くの人々を感動させた石油輸送作戦を、私たちはまだ忘れてはいない。貨物列車の運行こそ、日本のエネルギーの動脈だ。維持し、改善する必要がある。
エネルギー輸送の要望として、ENEOSは水素エネルギー輸送を挙げた。水素を液化して輸送すると低温維持のためエネルギーを使うけれども、有機ハイドライドとして貯えると常温で輸送と貯蔵ができる。この技術と既存の石油輸送設備を活用すれば、水素の国内輸送ネットワークをつくれる。貨車1両分の輸送で燃料電池車へ約930回充填(じゅうてん)できるという。
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