チケット販売や書籍の出版などを手掛けるぴあ(東京都渋谷区)は、人気ミュージシャンで音楽プロデューサーのHYDEさんが企画とプロデュースを務めた画集『閃き 〜 INSPIRATIONS 〜 画狂人 井上文太』を8月26日に発売する。
著者はHYDEさんが「兄貴」と慕う30年来の友人で、画家の井上文太さんだ。井上さんにとって初の画集となり、描きおろしを含む200点あまりの作品を収録した。
丸善 丸の内本店(東京都千代田)の週間ベストセラーでは、個展開催に関連した先行販売ながらノンフィクション部門で1位を獲得。楽天市場の書籍売り上げランキング美術品部門でも一時、1位になるなど、正式な発売前にもかかわらず異例の反響を呼んでいる。
井上さんは国際海洋保護団体「OCEANA」が主催する「Christies’ The Green Auction」で、2011年に日本人として初出品した代表作「Light Wave」によって海外デビューを果たした。画家としての活動以外にも、三谷幸喜脚本のNHK連続人形劇『新・三銃士』やNHKパペットエンターテイメント『シャーロックホームズ』のキャラクターデザイン・美術監修を手掛けている。
画集では、日本画、水墨画、仏画、油絵、水彩画、書、デザインなど多様な手法を通じて、生命への敬意と未来への希望を活写した。井上さんと親交の深い、ロックフェラー財団ディビッドロックフェラーJr.会長の妻スーザン・ロックフェラーさんの肖像画や、HYDEさんが寄せた文章も収録している。
「文太兄貴は三大欲求のごとく絵を描く。描かないと死ぬとでも思ってるのかな? まさに画狂人」(HYDEさん)
画集の発売に先駆けて、丸善 丸の内本店4階ギャラリーで個展「画狂人 井上文太展 " iNSPiRATiONS " 魔法の林檎」が8月23日まで開催中だ。画集に掲載した作品を中心に水墨画、龍、波、生命(いのち)のシリーズや、ジグレー版画(コンピューターを使った版画技法)など約100点を展示、販売している。
井上さんが描いたHYDEさんの肖像画『Dears - HYDE』も展示した。井上さんは「今回、初めて肖像画を描きました。僕が生きている間にHYDEを描けて幸せです」と話す。
『Dears - HYDE』は、見る角度によってHYDEさんの表情が変わるように描かれている。作品を右の角度から見ると、瞳の強さが際立ち、左から見ると憂いを感じさせる表情になるように感じた。この肖像画も、画集に収録されている。
画集を編集した、ぴあの望月展子さんに出版の経緯や狙いを聞いた。
「画集の企画について、きっかけはHYDEさんにいただきました。エンタメ分野を中心に手掛けている当社では、いわゆる画集を手掛けたことはほとんどありませんでした。ですが、井上さんとお目にかかってエネルギーの塊のようなキャラクターを含め、とても興味深いと思いました。大きくいうと、ただ本を出して終わりではなく、そこから井上文太さんという存在を多くの人に届けることをミッションに据えたといいますか。
当社はHYDEさんのライブのチケット販売も手掛けていますし、会社としてシナジーをいかに出せるか、バリューチェーンをどう作るかが課題だと捉えています」
今回、Tシャツやトートバック、 ステーショナリーなどの「画狂人 井上文太 オリジナルグッズ」を制作・販売するなど、社内の部署を横断する形で企画を進めた。さらに8月21日には画集の購入者80人限定で、井上さんによるサイン会を開催。当日も多くの来場者が丸善 丸の内本店に足を運び、大盛況のうちに終了した。サイン会の整理券は8月11日に配布を開始したものの、数日で売り切れたという。
望月さんは「大きな手応えを感じています。今後もこの画集を軸に、多様な形で井上さんの存在を広めていきたい」と意気込んでいる。筆者もサイン会の日に足を運んだが、井上さんの熱心なファンが詰めかけていた他、個展によって井上さんの存在を知ってサイン会に足を運んだ人もいた。画集を発売する前に、個展開催によって、すでにファンの熱を高めている状況なのだ。
どうしてこの熱気が生まれたのか。ぴあが画集の制作を進めていたところ、丸善が井上さんに個展の話を持ち掛けた。そこで、ぴあが画集の発売日を同時期に合わせたのだという。
偶然にもその後、横須賀美術館からも個展開催の話が井上さんにあり、現在、同美術館で作品展「特集:井上文太 Inspirations」が9月25日まで開催されている。さまざまなタイミングも一致し、画集のタイトルの通り、多くの人々の“インスピレーション”が重なった形だ。
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