――本場の博多豚骨ラーメンとは、どのように変えているのでしょうか。
最初は「呼び戻し」という製法でスープを作っていました。今は支店だと3本、本店だと4本のずんどうを使いながら、髄、骨、水のみで作っています。背脂などは一切入れていないのが特徴です。
横浜の家系と博多豚骨の中間のような感じの味で、そこが違いになるかなと思います。
――創業からその味にたどりついていましたか。
今の味にたどりつくまでには4年ほどかかっていますね。最初は「豚丸骨(げんこつ)」一本でスープを作っていたり、背ガラを使ってみたりと試行錯誤の連続でした。結局、骨でダシを取ることに行きついたのですが、骨の量などは今でも少しずつ変えていっています。
――05年に店舗を始めて17年目になります。順調に店舗拡大してきた感じなのでしょうか。
順調ではありませんでした。実は07年9月に一度、店を閉めているんです。
当時は従業員の賃金の支払いも滞り、付き合っていた業者さんも月払いではなく現金でないと付き合ってもらえない状況にまで陥っていました。お客さんも全然こなくて、どんどん暇になっていったのを覚えています。
――なぜそこまで客足が離れてしまったのでしょうか。
僕は福岡で生まれたこともあり、「これが本場の豚骨の味だ」というこだわりがあったんでしょうね。当時はもっときつい豚骨を出していました。
ただ、九州地方特有の、あのきつい豚骨臭に慣れている人であればいいのかもしれませんが、石川県の方をはじめ、そうでない地域の人にとってみればただの強烈な悪臭なんですよね。
「腐っているのを出すんじゃねえよ」と、当時お客さんから言われたこともありました。
――それでどのように改善していったのでしょうか。
もうそれこそ3カ月ぐらい、一人で店に寝泊まりして、ただひたすらスープを作り直していました。店のホースでシャワーを浴びた記憶も蘇ります。
店にこもるだけでなく、他のお店に食べに行ったり、お店のバックヤードでごみ箱を見たりもしました。あの3カ月間が、人生で一番勉強したと思います。
――どんなことを学んだのでしょうか。
それまでは自分の舌の感覚を信じ切っていて、豚骨スープの返しの味がブレるということも分かっていなかったんです。
自分の舌頼りだと、朝や夕方といった時間帯や、その時の疲労度によって感覚がどうしてもブレてしまうのです。
――自分の感覚を捨て、より科学的にラーメンを作るようになったとも言えそうです。
店を閉めるまでは、その日や、同じ日でも朝と夕方で豚骨スープの味が全然違うというのもザラでした。実際に、午前中はお客さんが来るけれども、夜は全然来ないということがありました。豚骨の管理の仕方が全く分かっていなかったんですね。
スープの味を改善するだけでなく、あらゆる方法でとにかくお店の味を安定させることに努めました。
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