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プロダンスリーグ「D.LEAGUE」を生み出したフルキャスト創業者 忘れられない“3つの決断”会社を大きくするということ(5/6 ページ)

» 2022年09月05日 05時00分 公開
[武田信晃ITmedia]

「自分にとって都合よく解釈できること」

――平野さんにとっての運がいいとは、どういうことなんですか?

 「自分にとって都合よく解釈できること」と思っています。

 運がいい人100人と、運が悪い人100人がラスベガスに行ってギャンブルをしたデータがあります。どちらが勝ったのかといえば、引き分けでした。

 ただ、その様子が動画で撮影されていて、運がいい人たちは「よっしゃ、俺たち勝ってる、ついてる」って話すんです。運が悪い人たちは、自分が勝っているにもかかわらず、「次、負けたらどうしよう」と言います。外に出てくる表現や態度が異なっています。

 運が良いと思っている人は、周りに人がついてきます。周囲が、運の良い人にかけたいと思うからです。それは、人を巻き込む要素になっているという実験データの帰結でした。

 自分も若いころはそうでした。「俺がやっているんだからついてこい」と言っていました。でも、根拠があるかといわれると、ないのです。

 それでも周りは「平野さんだったら何となくやってくれそうだから来ました」と言ってくれました。前向きに話す人と、愚痴を言う人には、そこで雲泥の差がつくのです。

――長い経営人生は、決断の連続だったと思います。忘れられない決断は?

 大きな決断は3回ありました。1回目は、フルキャストがまだ従業員10人ほどの小さな会社だったときです。私もイケイケで、現場で従業員とぶつかった時がありました。その際に「もうやめちまえ」と言ったら、事務員以外、本当に翌日、会社に来なかったんです(苦笑)。

 これでは会社がつぶれると思って夕方に電話しましたね。私から従業員に「戻ってきて」と言いながら話をしました。27歳ぐらいでしたから若く感情的でしたね

 2つ目は上場する直前まで会社を大きくしていったときです。「借り入れ、借り入れ」で、その限界まで来たときにITバブルがはじけました。銀行から見放されそうになって危なかったのです。私も個人補償をして、知り合いの社長さんなどに助けてもらいました。

 3つ目は、当時の人材派遣大手を含めて業界全体が叩かれたときです。350億円の借り入れがあった一方、手元資金は150億円しかありませんでした。銀行から取引停止となり、個人補償をしろという話になりました。このときも「倒産するかもしれない」と思いました。

photo CyberAgent Legit

――最後に、Dリーグの5年先、10年先のビジョンは?

 今年はYogibo presents THE MATCH 2022など格闘技のビッグマッチがありました。大きな放映権もそうですし、今後は海外展開のライセンスビジネスを考えています。

 コロナが終わった後、アジアの親日国から見ると日本のエンタメコンテンツは魅力的に映っていると思います。最初はアジア、やがて欧米へと、Dリーグのライセンスを展開できればと思っています。米国版のDリーグ、タイ版のDリーグなどですね。

 日本はダンス大国ですから、優秀なダンサーを監督として派遣することも十分に可能だと思っています。歌は言葉の問題がありますが、ダンスは言葉がいらない。この点は大きなメリットだと考えています。

photo dip BATTLES

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