日本国内で展開されているサービスであれば、為替要因が価格上昇の原因となるというイメージは湧きづらいかもしれない。しかし、そのようなサービスを裏で支えている「クラウドサービス」の多くは、米国のAmazon Web Service(AWS)やGoogle Cloud、クリエイティブ面ではアドビなどのITサービスがドル建てで提供されている。
PCやスマホなどのハード面ももちろんマイクロソフトやアップル社製品をはじめとした海外製品に依存しており、円の価値が落ちればそのような機器を調達するコストも跳ね上がってくる。
筆者もWebページなどのサーバを一部AWSで管理しており、月額10ドルほどのドル建て課金が発生している。今までは10ドルと聞くと大体1000円といった具合だっただろうが、今や10ドルは1450円だ。
Webページ程度であればまだ吸収しきれる規模感ではあるが、大規模なSaaSアプリケーションや動画配信サービスのように、大量のサーバーリソースを消費する企業の場合は、クラウドサーバ代だけで年間100万〜200万ドルを超える請求になることもある。
年間のサーバ代が200万ドルであれば、この円安でおよそ8400万円ほど支出が増えることになる。
従来、サーバは自社設備で運用するというオンプレミス型が一般的だった。この場合、初期投資がかかってしまう反面、構築した自社設備は資産扱いになり、情報漏洩が発生しにくいといったメリットがある。
しかし、近年爆発的な伸びを見せていたのがAWSのようなクラウド型だ。災害リスクや初期費用を抑えながら、使った分だけ課金されるというモデルで効率的なランニングコストも実現できるということで人気を博してきた。
今もクラウド型の強みは消えていないものの、如何せんそのようなサービスはドル建て課金であるAWSやGoogleCloudといった米国企業に依存している。為替要因が大きくランニングコストを左右してしまうというリスクがあることも浮き彫りになってきた。
クラウド依存の国内向けで身近なサービスが、月額料金を上げたり、広告の表示頻度を高めるといった方法でサーバリソースといった“輸入品”の価格上昇に対応してくる可能性にも注意を払っておきたい。
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