“経済制裁並み”24年ぶり円安が日本を襲う……家計の資産と収入は「実質4割引」に?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2022年09月09日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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ただ、焦りは禁物?

 4月に取り上げた筆者の連載記事では、さらなる円安への対策として為替予約を行うといった対処法を紹介した。当時から現在まででおよそ20円ほど円安が進行しているため、あの時に為替予約をしていれば、その分だけ円安による目減りを防げただろう。

 しかし、今のように円安が進みきった段階で、焦って為替予約を行うことは、ドルの高値掴みになる恐れがあり、慎重に検討すべきである。

 わずか数週間で10円単位も円安になると、この相場がいつまでも続いていくのではないかと思われる方も多いかもしれない。しかし、足元の円安は、世界的に足並みを揃えた利上げ基調に唯一日本だけが利上げに踏み切れていないという、かなり特殊な環境だからこそ実現している。

 そんな状況は歴史的に見てもかなり珍しいもので、国内外の円安になり得る選択肢が“全部乗せ”になっている状況だ。例えるならば、「完全に伸長した輪ゴム」や「縮みきったバネ」のような環境になっている。つまり、その反動はとても大きなものになると予想する市場関係者も少なくない。

 「山高ければ谷深し」の相場格言の通り、ここからの円高も相当大きなものになるというリスクが足元の円安の裏で増大しているのである。

直近5年のドル円レートの推移。円安になる理由ももちろんあるが、行き過ぎた円安だと見る関係者も多い(TradingView)

 歴史的に、ドル円相場が130円〜140円を超える極度の円安を経験すると、そこからとてつもないスピードで円高に巻き戻されている。

 したがって、足元の円安相場を乗り切る上では、今からドルや輸入品を買い溜めて更なる円安に備えるよりも、当分の間は手持ちの物資で円高になるまで耐え忍んでいくといったスタイルの方が好ましいのではないか。

 ターニングポイントは黒田総裁の後任人事だ。「任期切れ間近で極端な政策変更ができない」と噂される日銀は、世界中の市場参加者から「どれだけ円売りしても安全」とみなされている節もある。

 しかし、今年の後半には、黒田氏の後任人事が決定されてくるだろう。そのタイミングで投機的な円売り基調にも歯止めがかかってくる可能性がある。今後は、今の円安に狼狽(ろうばい)せず、斧を研いで針にするような忍耐強さが求められてくることになるかもしれない。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


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