クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型エクストレイル 欠点のないクルマの意味(後編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2022年09月13日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

手練の日産の作り込み

 さて、新型エクストレイル。座ってみると、シートはなかなか良い。ステアリングとペダルの位置もしっかりしている。変なオフセットはない。

 全長・全幅・全高はそれぞれ4660ミリ、1840ミリ、1720ミリと決して小さいクルマではないのだが、走り出すとボディサイズは掴(つか)みやすく、とても運転がしやすい。数字よりもコンパクトに感じる。

 パワートレインのフィールは当たり前だがBEVそのもの。リーフ以来、この方面のノウハウがしっかりしている日産なので、アクセルの踏み始めのところは、ドカンと走り出したりせずに微速制御もキチンとできているし、何より扱いやすい。余計な緊張感を伴わず、気楽に自然に操作できる。全域において加速制御は大人の余裕を感じて好感度が高い。なお、走行中にエンジンが始動しても、ちょっと気付かないくらい静かである。わざわざ聞き耳を立てていれば別だが、普通に運転している限りは、モニターの表示で初めて気付く程度である。

 ステアリングも、切り始めの微舵角領域がちゃんと仕立てられていて、安心感がある。ただそこから舵角を入れたところで少し動きが速い。いわゆる舵角に対するヨーの付き方の角度が立っている感じがある。スロットルのフィールとの整合性でいうともう少し落ち着かせても良いのではないかと思う。ただし、この感じは15分も走ると慣れてしまうので、好みの範疇(はんちゅう)といえるかもしれない。

 高速道路での直進安定性は教科書通り。さすがに手練れだと思う。自然で肩の力が抜けた直進性で信頼感が高い。一方で、日産肝いりのプロパイロットは、昨今の各社の最新型ADASと比べて、さすがプロパイロットというほどに差は感じない。特にダメなところがあるわけではないので悪く評価するものではないが、これがプロパイロットかという新味はなかった。

 ワインディングでのハンドリングは、このサイズと重量のクルマとしては望外の出来だ。キビキビとよく走る。文句無しである。目下売り出し中のe-4ORCEの効果もあって、不安感なく走れる。日産のお勧めもあって、e-4ORCEの効果が分かりやすいSNOWモードも試してみた。確かに旋回特性や姿勢制御が変わるが、少し不自然だ。標準のECOで走った方が効きは自然だ。ただしSNOWのお陰でe-4ORCEの働きはよく分かった。特にモーター駆動のクルマにとって、これからは駆動力制御はおそらく競争領域になっていくので、更なる進化が楽しみである。

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