現在、電気調理鍋市場で最も存在感が大きいのは、指名買いも多いホットクックだ。他社製品と比べると高価ではあるが、ブランドをしっかり確立しており、市場をけん引する存在であることは間違いない。しかし初登場から約7年が経過し、ホットクックの優位性は揺らぎ始めている。
というのも、人気を集めた理由の1つである、食材の栄養を逃さない無水調理機能などに対応する他社製品が増えており、機能面での差がなくなり始めているのだ。機能差がなくなり機能が画一化してくると、購入時の優先順位は価格の安さへとシフトしてしまう。実際、アマゾンや大手家電量販店の売れ行きランキングは、比較的低価格なシロカやアイリスオーヤマ、ティファールの電気圧力鍋が上位を占めている。
ホットクックは当初、容量1.6リットルサイズでスタートし、その後2.4リットルサイズを追加するなど、3〜4人暮らしのファミリー向けにサイズを展開していた。他社が少人数世帯や単身者世帯の需要を開拓したことを受け、1.0リットルの単身者向けモデル「KN-HW10G」(実勢価格3万3980円)も用意し、ラインアップを拡充させたものの、シンプル機能の小型電気圧力鍋との価格差は大きい。
現在、この低価格化の流れが強くなっており、メーカーにとっては喫緊の課題となっている。例えば電気炊飯器市場でも、数多く売れるのは低価格モデルだが、機能を進化させ、市場をけん引するのは10万円を超える高級炊飯器なのだ。
これまで電気調理鍋市場には、機能面で市場をでけん引する上位製品はホットクックしかなかった。そんな中で登場した回転機構を搭載するアイリスオーヤマの「シェフドラム」は、久しぶりにホットクックと対抗する5万円超の高付加価値製品。決して安くはないため、大きく売れるとは考えにくいが、鍋が回転する機構は非常にわかりやすく、話題性も高い。
かつてホットクックが、電気調理鍋市場の認知を拡大したように、シェフドラムが低価格化の流れにある電気調理鍋市場を再び活性化させ、さらに拡大させるきっかけになる可能性は高い。アイリスオーヤマが05年に家電市場に参入してから17年。シェフドラムは、ホットクックと並んで市場をけん引していく製品になるかもしれない。
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