【10月開始】短時間労働者への「社会保険適用拡大」 企業が知っておくべきポイントを解説対象者が大幅に拡大(2/3 ページ)

» 2022年10月03日 07時30分 公開
[佐藤敦規ITmedia]

社会保険加入を嫌がる社員、どう説得する?

 社会保険に加入していない短時間労働者については、要件に該当するかの確認が必要となります。まずは、週の平均労働時間数を確認しましょう。シフト制で働いているパート社員の場合は、週によって労働時間がまちまちな人もいますが、週平均の時間が20時間を超えていれば加入対象者となります。

 加入対象となる従業員を確認したら、社会保険の適用範囲拡大について社内へ周知しましょう。新たに社会保険の加入対象になるパート・アルバイト従業員に法律改正の内容、対象となった理由、また適用範囲拡大によって変わることを伝えます。厚生労働省がWebサイトで説明用のパンフレットを公開していますので、それを活用しましょう。

厚生労働省が公開しているガイドブック(画像:厚生労働省公式Webサイトより)

 課題は加入に難色を示す社員の説得です。給料から社会保険料が控除され手取り額が減るため、嫌がる社員もいるでしょう。特に配偶者の被扶養者になっている社員は、自分でお金を払うことがなく健康保険に加入できていたので抵抗があるかもしれません。企業側と同じように従業員にとっても年間15万円以上も手取りが減ってしまうのは、大きな痛手です。

 そうした従業員に有効なのは、3号被保険者にない出産手当金や傷病手当金の制度を説明することです。出産手当金は、出産日(出産が予定日より後になった場合は出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった期間を対象として支払われる制度です。傷病手当金は、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。新型コロナに感染し、その後遺症でしばらく就業ができなかったようなときにも利用されています。

特に派遣会社が確認すべきポイント

 今回の適用拡大で変わったのは、特定適用事業所の規模だけではありません。社会保険の加入要件であった「2カ月を超えた雇用の見込み」という扱いも変更されています。正社員同様、フルタイムで働く有期の契約社員や派遣社員の場合は、2カ月以上雇用する予定があっても雇用契約書に記された初回の契約期間を2カ月と短期間にしているケースがありました。正社員と異なり、契約社員や派遣社員は、不定期の仕事増に対応するため、採用面接に時間をかけない傾向があります。

 その結果、適正やスキルなどの面でのミスマッチが発生するケースもあるからです。9月までは、2カ月以上の雇用する可能性が高くても、初月からではなく2カ月を超えたときから社会保険に加入させている会社もありました。それが「更新の可能性がありうる」という記載になっている場合は、原則として初月から社会保険に加入させなければならなくなります。

 では、雇用契約書に記された「契約更新」の可能性をなしとすればよいかというとそのような単純な話ではありません。2カ月経過後も引き続き契約が続いている場合は、初月から社会保険に加入しなければなりません。

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