成功とはいえない。それでも日系アパレルがベトナム市場で戦い続ける理由中国からは撤退(5/6 ページ)

» 2022年11月18日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]

「生産国」から「消費の国」へ

 1号店のオープン前には、ベトナムで利用者が多いフェイスブックでの告知に加え、駅やオフィスビルなどのサイネージ広告も活用した。また、「ネム」を運営するなかでハノイエリアの立地や顧客層を熟知していたこともあり、オープン直後の集客に成功したようだ。

 とはいえ、ショッピングモールが極端に少ないベトナムは、まだまだ路面店の世界。移動はバイク中心となる。オープンした9月は雨季が長引き、30日間のうち20日間が雨だった。その後は客足が伸びず、9月は目標値の約90%にとどまったという。

 「この天気なら、だいぶ健闘したと思います。日本なら『Eコマースで売る』戦略が通用するでしょうが、ベトナムのEコマースは発展途上です。当社のブランドは自社サイトと外部通販サイトを利用していて、自社EC限定商品も用意しています。ネムのEC売上高は、5年前と比較して200%以上に成長していますが、まだまだ実店舗が優勢です」(張替氏)

いまだベトナムの小売市場は、実店舗、かつ路面店がメイン

 17年からベトナム市場で勝負している張替氏は、同国の魅力を「これから消費が期待できる国」だと語る。

 「多くの日本企業にとって、ベトナムは安くつくれる『生産国』の一つだと思います。中国の人件費高騰を受けて、中国から生産をシフトするうえで候補に上がる国だろうと。実際、現地にはアパレルや自動車など相当数の生産工場があります。

 しかし、私の見解では生産国としてのベトナムはここまでで、これからは『消費の国』になっていくだろうと。人口はまもなく1億人と増加していて、若い世代が占める割合も多い。経済もどんどん伸びている。インドネシアやカンボジアも、同様の理由で注目しています」(張替氏)

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