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ダノンジャパン社長に聞く「日本発のオイコスが世界に展開できた理由」製品のイノベーションハブ(2/3 ページ)

» 2022年11月22日 11時41分 公開
[武田信晃ITmedia]

日本で誕生した「オイコス」 世界展開できた理由

――ダノンにとって日本市場は、どんな位置付けでしょうか? 他市場と比べてどんな特徴を持っていますか?

 日本市場は一言でいえば「医食同源」です。病気を治療するのも食事をするのも、共に生命を養い健康を保つためには欠くことができないもので、源は同じだということですね。日本人は、食が人々の健康に関係が深いものであることを理解しています。

 私たちの機能性食品は人々の健康に資するところにミッションを見いだしています。その意味で、日本はダノンにとって興味深い国ですし、世界に展開できる1つのインスピレーションの源にもなっています。

 つまりイノベーションの源泉であり、チルド乳製品の新しいアイデアの発想元とも言えます。高タンパク質・脂肪ゼロ・100キロカロリー未満のヨーグルト「オイコス」はまさに日本で誕生し、製品名は変えているものの欧米などへと広がっていきました。

 オーツミルクの「アルプロ」はもともと、米ホワイトウェーブのブランドで、2017年にダノンが買収しました。これをアジア展開しようとするとき、まず思いつくのは「日本市場で成功しよう」ということです。

 日本でテストし、日本人のニーズを捉え、市場展開をしていきます。その過程で、アジア市場との共通性も見いだせるので、例えば東南アジア市場参入へのヒントにもなるのです。

photo アルプロ

――マーケティングの手法として新商品を地方の札幌市などでテストし、成功すると全国展開するという話を聞いたことがあります。ダノンの場合は日本で成功すると世界で成功する確率が高いと、考えていいですか?

 日本人は、製品の機能性やパッケージなどへの興味が高いので、日本で成功すると海外でうまくいく確率は高いと思います。私はタイにも住んでいましたが、日本はソフトパワーが強く、日本の影響はアジア全体で看過できないものがありました。

photo 躍進を続けるダノンジャパンのブランド

――先ほど、日本はイノベーションのハブになっていると話していましたが、ダノンジャパンには研究開発センターがあるのですか?

 R&Dセンターのような拠点はありませんが、研究開発チームは持っています。チームはパイロットプラントという小さな商品開発用の工場を持ち、日本の消費者に喜ばれる商品を開発しています。もちろん、仏パリにあるR&Dのチームとも密接に連携をしています。

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カテゴリーによってアプローチを変える

――商品は販売先の嗜好に合わせた味にするのですか? それともオリジナルの味で販売するのですか?

 カテゴリーによってアプローチを変えます。専門栄養食品は一元管理をするので味に変わりはありません。チルド乳製品と植物由来の製品は、日本のために開発したレシピを作り展開しています。また、日本では季節限定商品が重要で、季節ごとに商品を発売したりもしています。

――ちなみに日本人はどういった味を好みますか?

 例えばストロベリーもいくつか系統があるのですが、ジャムっぽい味と摘みたていちごのようなフレッシュな味があるとします。日本でジャムっぽいのを好きなのは年配の方で、摘みたていちごは若い人が好みます。ブランドによって、どの層に買ってもらいたいかを決めて最適な味を選んでいます。

――ダノンは日本でも長らくビジネスをしていて、味の素と協業していました。個人的に私がダノンを知ったのは1990年代前半のイタリアのサッカーチーム、ユベントスのスポンサーとしてです。その後、カナダ、香港に住みましたが現地でのダノンの存在は日本と比べて強かった印象があります。日本でエビアンは知られていますが、他の商品について、今後どのように存在感を高め、差別化を図っていきますか?

 おっしゃる通りです。ダノンは、最初からグローバルなビジネスをしてきたというより、ローカルビジネスの集合体のようなところがあります。個々の市場によって、販売している商品も異なっていて、会社全体でみると多岐に渡るカテゴリーを展開してきました。

 しかし、今は3つのカテゴリーに絞り込んでいます。理由は、1つの地域の成功事例を各地域に横展開したいからです。それが日本においては、ビオ、オイコス、アルプロだということです。

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――日本でのヨーグルトのシェアを7%から13%にしたいとプレゼンで語っていましたが、どのように実現させますか?

 13%まで拡大すると規模のメリットを享受することができます。次の3、4年で今の約2倍のシェアにしたいのですが、「戦場」をあまり広げず、必要なところに商品を届けることを確実に進めることが大事です。

 ビオ、オイコス、アルプロに集中・特化することによって、飛躍的な伸びを実現するよりも着実にシェアを拡大していきたいと思っています。事実、過去3年間では毎年1%ずつシェアを拡大させてきました。それを継続していきます。

――ヨーグルトでの数値は分かりましたが、他のカテゴリーはどうですか?

 ウォーターはダノンジャパンの業務範囲ではありませんので、すみませんが、お答えできません。植物由来の製品であるアルプロは現在3%のシェアです。伸びしろがあると思っていますが、植物由来の製品はまだ歴史が浅いこともあり、目標数値を設定する段階ではありません。

 日本の消費者は保守的な面もあるので、今はアルプロの知名度を上げ、しっかりと育てていきたいです。「専門栄養食品」は検討を重ねていますが、まだ日本では事業展開するまでに至っていないという見解です。

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