では、「賃上げドミノ」を起こすにはどうすべきか。
消費税をゼロにしろ、大企業からガッツリ税金をとって中小企業にバラ撒(ま)けば解決だ、などいろいろな意見があるだろうが、根本的なところでは、諸外国のように「最低賃金の引き上げ」をしていくしかない。
ご存じのように、中小企業の経営はブラックボックスだ。株を持つオーナー社長が家族を役員にしていることが多く、株主など外部の意見はほとんど反映されない。社員数名という小規模事業者も多いので、労働組合などほとんどない。社員や外部に経営の数字が開示されることも少ない。
こういう「ブラックボックス経営」にいくら税金を投入したところで、経営者が乗り回す高級車に消えたり、家族の役員報酬に消えたりするだけだ。
つまり、消費税をゼロにしようが、中小企業に莫大な補助金を投入したところで、そこで働く日本の7割の労働者にはほとんど「還元」されないということなのだ。
だからこそ「最低賃金の引き上げ」という“外圧”が必要だ。
法的に賃金のボトムラインを引き上げると、どんなブラックボックス経営でも賃上げせざるを得ない。あらゆる企業が対象なので、賃上げを価格に反映しやすい。賃上げすると潰れてしまう企業もあるだろうが、そこは新規事業や成長を目指して企業努力をしていくしかない。
世界の中小企業は、みんなそうやって成長している。そして、成長ができない中小企業は「なんとか労働者を安くこき使って延命しよう」ということにはならず、事業を畳むか、競争力のある企業への事業を売却・譲渡していく。そうして、経済というのは新陳代謝していくものなのだ。
というと、「数だけを見て本質的なところが分かっていない! 中小企業は大企業の下請けとして搾取されているので、その構造を変えないで最低賃金の引き上げなどをしても倒産企業を増やすだけだ」という反論もあるだろう。
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