今回のNTTの賃上げもそうだ。「NTT」という圧倒的なブランド力と知名度、そして国内屈指の33万人という巨大グループと合わせて、立派な専門家に「NTTが変われば、日本企業も変わっていくかも」なんて言われると、すぐに鵜呑(うの)みにしてしまう。
日本の労働者の7割にあたる約3220万人が中小企業で働いているという事実はスコーンとどこかに飛んでいって、「NTT」と「33万人」という「なんとなく影響がありそうなパワーワード」に引っ張られてしまう。
こういう「なんとなく」に弱い国民性をあらためない限り、日本の経済政策は「なんとなく効果がありそう」というイメージだけで、実際は大して効果のないものに流れがちだ。
それが「バラマキ」と「減税」だ。構造的な問題に手を突っ込まずに、カネをバラまいていれば景気がよくなって経済が成長するなんて、そんなうまい話は世界のどこにもない。しかし、多くの日本人は「市場にカネが出回ればなんとなく景気が良くなりそう」という雰囲気に流されてしまうのだ。
今こそ、「日本経済を支えているのは誰か」「本当の大多数は誰か」という視点で、客観的なデータに基づいた経済政策が求められるのではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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