NTT「初任給3万アップ」が、日本の「賃上げ」に繋がらないこれだけの理由スピン経済の歩き方(7/7 ページ)

» 2022年11月22日 11時01分 公開
[窪田順生ITmedia]
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客観的なデータに基づいた経済政策

 今回のNTTの賃上げもそうだ。「NTT」という圧倒的なブランド力と知名度、そして国内屈指の33万人という巨大グループと合わせて、立派な専門家に「NTTが変われば、日本企業も変わっていくかも」なんて言われると、すぐに鵜呑(うの)みにしてしまう。

 日本の労働者の7割にあたる約3220万人が中小企業で働いているという事実はスコーンとどこかに飛んでいって、「NTT」と「33万人」という「なんとなく影響がありそうなパワーワード」に引っ張られてしまう。

2022年度新入社員の初任給(出典:労務行政研究所)

 こういう「なんとなく」に弱い国民性をあらためない限り、日本の経済政策は「なんとなく効果がありそう」というイメージだけで、実際は大して効果のないものに流れがちだ。

 それが「バラマキ」と「減税」だ。構造的な問題に手を突っ込まずに、カネをバラまいていれば景気がよくなって経済が成長するなんて、そんなうまい話は世界のどこにもない。しかし、多くの日本人は「市場にカネが出回ればなんとなく景気が良くなりそう」という雰囲気に流されてしまうのだ。

 今こそ、「日本経済を支えているのは誰か」「本当の大多数は誰か」という視点で、客観的なデータに基づいた経済政策が求められるのではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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