PS5 なぜ2年も品不足に苦しんだのか(3/3 ページ)

» 2023年03月31日 06時35分 公開
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「転売」横行の流れに

 三つ目は、品不足を加速させ、ゲームファンの怒りを買った「転売」の存在です。裏付けとなるデータはないものの、多くのPS5がネットで異様な高額で売り出されていたことに、平常心ではいられなかったはずです。こうした状況がメディアで繰り返し報じられ、PS5が高値で取引されていることが広く世間に知られるようになりました。

 そして今や個人が気軽に商品を売買できるフリマアプリがあります。「PS5の転売はもうかる」という情報は、ゲームファン以外の人たちにとってどう感じるかは想像できるはずです。店舗の抽選販売でも、PS5を手元に置きたいゲームファンと、そうでない人たちを見分けるのは大変です。こうしてPS5を希望小売価格で入手するのは、一層難しくなりました。

photo 「メルカリ」に高額出品されたPS5

 ソニー側も、「フリマアプリ」の運営側に、PS5の高額転売を防止してほしいという打診をしますが、要望はスルーされました。また、転売を防止するために、販売店向けに「開封済」と書かれたシールを配布するなどして、転売を目的にした人が新品として売れないようにしました。

photo メルカリでは一時30万の出品もあった

 しかし、最も効果的な対策は、結局のところ、PS5の台数を増やすことにつきます。しかしどうしても時間がかかる話で、物流の混乱、物価高もあります。

 またPS4の販売実績では、日本より欧米の市場が圧倒的に大きく、ゲーム機の販売動向を見た時、主戦場である米国でのシェア争いが注視されます。ゲームはビジネスですから、イメージ作りも重要で、どうしても日本が「後回し」になる実情はあったでしょう。それでも、PS5のスムーズな増産ができていたら、日本への供給量も増えていたし、転売も緩和できていたでしょう。

「当たり前」のありがたさ

 人気のゲーム機は、旺盛な需要があり、年間で1000万台以上売れるのは当たり前です。一方で供給のバランスは繊細です。部材調達、生産、流通が密接に関連しており、世界をまたにかけているため、供給不足になりやすいのです。コントローラーや、製造を終了したゲーム機の市場価格が上がることもあります。

 そして空輸などの高額なコストをかけるなどしたメーカー側の必死の努力は、消費者が感じ取ることはなかなかできません。そして2年間も品不足に苦しんだということは、裏返すとその解決のために、メーカー側も同じ時間だけ、問題解決のための努力をしていたということです。

photo 中東カタールでも販売されているPS5(22年12月、編集部撮影)

 2月から「PS5が普通に買えた」という声もよく見るようになりました。この「当たり前」は微妙なバランスの上で成り立っていることを実感させられますし、ありがたさを感じるところです。そしてPS5がどこまで出荷数を積み上げられるのか注目です。

書き手:河村 鳴紘(かわむら・めいこう)

ゲーム、アニメ、マンガなどを主戦場にするフリーランスのサブカルライター。ヤフーオーサー、マンガ大賞選考員。メディア所属時には、決算会見や各発表会に参加し、独自記事なども執筆。20年以上ゲーム業界を中心に取材している。2020年5月、「ドラゴンクエスト」大ヒット連発なぜ? 30年前の伝説の熱狂」でヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞した。「文春オンライン」や「Number Web」(ともに文藝春秋社)などでも記事を執筆。静岡放送などでラジオに出演することも。

ヤフーニュース個人:「河村鳴紘のエンタメ考察記

Twitter:@kawamurameikou

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