渡邉さんは銭湯外の消費者に対するコミュニケーションについて、以下のように話した。「やはりいろいろなコミュニティーとどう接点を持っていくか、だと考えています。キャンプやサウナなどの相性が良さそうなコミュニティーと引き続き関係を作りつつ、音楽コミュニティー内でチル系のヒップホップアーティストとコラボしたり、銭湯のような体験型のイベントを実施したりしていく予定です」(渡邉さん)
その一方で今後のコミュニケーション戦略について悩みがあるという。小杉湯だからこそ実現できた「体験価値の深さ」をどう他のシチュエーションで再現するか、という問題にぶつかっていると渡邉さんはこぼす。
「われわれの製品を理解してもらうには、絶対に体験価値提供のほうが合っていると思います。しかし、これまで小杉湯さんとやってきたような取り組みは十分なリソースが確保できないと実現できません。例えば、全国のチル系施設とコラボイベントやりますと打ち上げたとしても、そもそも経験のない施設は難しいかもしれない。ただ、チルアウトを正確に理解してまた買ってもらうためには深い体験価値を作り続けていくことが重要だと思うんです。リソースとコミュニケーションのバランスをどう取っていくか、ずっと考えています」(渡邉さん)
コミュニティーマーケティングとマスマーケティングのバランスについても、どのような戦い方が正しいかを探っているという。現在はバランス型を採用し、マスマーケティングで認知を獲得しつつ、体験価値を高めるコミュニティーマーケティングを並行させて認知の受け皿を用意している状態だ。
今後の戦略について尋ねたところ「チルアウトが次のフェーズに移行したときに、どういうマーケティングが最適なのか正解をこれから見極めていかなくてはいけない」(渡邉さん)と表情を引き締めた。
飲料市場はレッドオーシャンだ。コンビニやスーパーの棚には毎週のように新商品が並ぶが、そのほとんどが市場に定着せず、人知れず販売終了になっていることは想像に難くない。チルアウトは銭湯とタッグを組み、リラクゼーションドリンクという新市場確立に向けて着実に歩みを進めている。飲料市場にうねりを起こせるか、チルアウトの胎動はすでに始まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング