その後も数回にわたってコラボを重ねた。小杉湯での最大の売上本数はコンビニの25倍に上る。小杉湯三代目の平松佑介さんによると、銭湯の鉄板ドリンクであるコーヒー牛乳の売上本数を上回る月もあるという。チルアウトが小杉湯の人気ドリンクの仲間入りを果たした理由について、平松さんは「体験の分かりやすさ」を挙げた。
「小杉湯はチルアウトの体験として、お風呂に入ってリラックスして、チルアウト飲んで、よく眠れる――を提案しました。この一連の流れがとても分かりやすかったのが、人気になった理由の一つだと思っています」(平松さん)
小杉湯のお客さんの中には「リラックスしてよく眠れる」という機能性を求めて来店する人もいるという。そこに「リラックス」を後押しするチルアウトを接続させたというわけだ。
平松さんは「体験の分かりやすさ」について別の事例も挙げる。「初回コラボのときはリラックス効果が期待できるテアニンを含むお茶をお風呂に入れましたが、2回目以降はチルアウトのドリンクに使っている香料をそのままお風呂に入れました。まるでチルアウトに浸かっているかのような体験を届けられたことも大きかったなと。五感を刺激する体験によって、ただのサンプリングよりも強い体験としてお客さんの記憶に残ったと思っています」(平松さん)
チルアウトの飲用シーンと合致しそうな施設でサンプリングをすることで認知や体験は広がるだろうが、あくまでそれは一時的なイベントでしかないのかもしれない。平松さんは、チルアウトとのコラボは「銭湯の体験価値を上げることにもつながった」と振り返る。
「小杉湯という場をメディアと捉えてサンプリングをするというケースもありましたが、チルアウトとは一緒にお客さんにリラックス体験を届けるという、パートナー的な位置づけで取り組めました。チルアウトのお風呂に浸かって、湯上りにチルアウト飲んで、そしたらなんだかよく眠れた――そういう体験をSNSでお客さんが自発的に発信するという好循環が自然に出来上がっていったんです」(平松さん)
小杉湯での成功体験を踏まえ、チルアウトは他の銭湯やサウナ施設とのコラボを強化していった。発売当初の課題であった、リラクゼーションドリンクという新市場の開拓は、小杉湯やその他の施設を通じた飲用シーンの設定や市場啓蒙により少しずつ進んでいっているようにみえる。
では、銭湯やサウナといったチルアウトの飲用シーンにハマる施設とは接点を持たない消費者に対してどのようにコミュニケーションを取っていくのか?
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