マーケティング・シンカ論

外資マーケターはなぜ“ちやほや”されるのか 背景に3つの事情日本のマーケティング最前線(3/4 ページ)

» 2024年01月05日 08時00分 公開
[小林幸平ITmedia]

希少価値の違い

 2つ目に、構造上外資系マーケターは相対的に希少性が高いという特性がある。

 大手外資メーカーの新卒マーケティング採用枠は驚くほど狭い。P&G(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)、ユニリーバ、ロレアルなど、各社年間数人〜20人程度しか採用枠がない。

 また先ほどお話ししたように、実際に芽が出てキャリアを積んでいける人材となると、そこから数%となるため、実はほぼ出現率がないことになる。

 現に筆者も多くの経営者から「マーケティングを強化したいから外資マーケターを採用したいのだけれど、紹介してくれないか?」と聞かれることが多いが、人がいないことを理由に断ることがほとんだ。

 私のLinked Inにも過去のキャリアを参照してか、うれしいことにいまだに多くのオファーが届く。それはもちろん先代の素晴らしい外資マーケター達が切り開いた実績のおかげであるため、感謝しつつ、やはりその人の実力以上に、このキャリアとしての希少性が市場における評価を大幅に押し上げていることも事実である。

自由度の高さの違い

 3つ目に、日系企業における投資スケールの大きさと自由度の高さがある。

 よく言われる話ではあるが、外資系企業は母体こそ大きいけれど、あくまで日本は1支社なので、国内ではそこまで規模が大きくないケースもある。その観点では、日本にその拠点を置く日系企業であればその投資スケールも大きく、それだけさまざまなプロモーション施策や最先端のマーケティングツールなどを取り扱う機会も増える。

 また、外資では方針を立てても海外本社の顔色を伺う必要があり、日本という特殊なお国柄がなかなか理解されず、日本にローカライズした施策の実行が時に難しかったりするのが事実だ。

 これらを踏まえると、日系企業におけるマーケティングでは、ただ単にそのダイナミクスを味わえるというだけでなく、社内決済さえ通すことができれば、比較的施策の自由度・柔軟性は高いと言える。

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