――学部生から博士課程まで一貫した改革をする構想なのですね。卓越大に応募するまでの経緯を教えてください。
準備を始めたのは21年の7月頃でした。学内の若手の皆さんに集まってもらいワーキンググループをつくりました。すでに内閣府の「総合科学技術・イノベーション会議」(CSTI)で、今回のプログラムに関連したさまざまな会議が公開で開かれていました。その辺りを見ながら、東北大学として「こういう提案をしたらどうか」と練り上げていったのです。21世紀型の研究大学を考えたときに「こういう大学が日本にあるべきだ」ということを基本に計画を書きました。
例えば「科学技術イノベーションのプラットフォームとなる」というビジョンを掲げました。世界的な研究業績を誇る半導体の分野で世界のR&Dのハブになる、次世代放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)を活用して材料科学から生命科学や食糧までのイノベーションエコシステムを構築する、さらには東北メディカル・メガバンク計画による15万人の住民コホート調査を未来の医療につなげる、このようなことがビジョンの核となります。
――コホート調査とは、人々の生活習慣情報を継続的に集め、生活習慣と環境がどのように病気と関連するかを調べる方法ですね。
東北メディカル・メガバンク計画の住民コホートは、東日本大震災の被害を受けて、国による復興計画の一環として計画されました。中長期にわたる地域住民の健康状態の調査を通じて住民の健康向上に資する、ひいては日本全体の健康向上に資することを目指しています。健康寿命を伸ばすために、それぞれの個人に必要な行動変容もデータから明らかにしたいと考えていて、すでに官民の協力のもと10万人のゲノム解析をほぼ完了しています。
英国の「UKバイオバンク」が有名で、50万人以上を追跡しています。この調査に携わるユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者たちが本学に視察に来て、感激して帰っていかれました。規模は英国の方が大きい一方、本学の調査のクオリティーと、取っているデータの幅広さに衝撃を受けておられました。例えば、歯に関するデータは、UKバイオバンクでは入れていないんですね。東北大学には医学と歯学の専門家集団がおり、その連携の良い点が特長なのです。
本学はこのように大規模なものも含めてさまざまなコアファシリティを擁していることから「イノベーションのプラットフォーム」としての役割を果たすべきだと考えています。ナノテラスには100社以上の民間企業が参加していますし、コホート調査でも製薬企業がゲノム解析の資金を提供してくれています。そういった民間の力も活用して、いかにイノベーションを起こすプラットフォームになるのか、研究大学としての東北大学の挑戦です。われわれ自身で起こす部分も含めて、社会との共創をもとに一緒にイノベーションの起点となるのがコンセプトです。
これと車輪の両輪をなすのが、社会課題の解決に向けた取り組みです。災害科学はその代表です。防災減災の在り方を研究して深め、連携して社会に普及させていく。さらに国際的な枠組みを提案し、そこに貢献する。UCLやワシントン大学とも連携しています。災害科学におけるこれらの取り組みは、東日本大震災を経験して、その後の復興と新生に関わった大学としての使命だと考えています。
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