――財務を意識している教員や職員は、それほど多いわけではないと思います。東北大の未来を考えて、そのような礎を築いてきたのですね。
研究者は、ある意味でジョブ型の職業です。従って財務を研究者が気にしなくても良いようにすることは重要です。研究者が思い切って研究と教育、そして社会との共創ができる環境をつくるのは、法人としての大学の仕事です。
今回の卓越大のスキームでは、授業料を除く国以外からの収入に対してマッチング支援が行われます。シンガポールでは同様のスキームがあり、それらをモデルにして、今回の大学ファンドの仕組みが作られたのだと思います。
産学連携から間接経費収入が得られますし、多くの方々からの寄付も増えています。これらの収入を、学生支援や産学連携に関わらない基礎研究の支援にまわすことによって、大学全体が発展していきます。大学債を発行して必要な事業を早期に開始することも進めています。バランス良く大学を発展させるためには、大学の本質を見据えつつ進める「大学経営」が極めて重要になります。
全ての教員に経営感覚が必要ではありませんが、大学内の資金循環の全体像について構成員が深い理解と見識を持つことにより、東北大はさらに発展すると思います。
――大野総長はスピントロニクス研究の第一人者でありながら、大学を経営する立場でもあります。いかにして研究と経営を両立してきたのですか。
両立したというより「いつの間にかこうなってしまった」ということですね(笑)。研究でも大きなプロジェクトをいくつかやると、どうしても経営を考えざるを得ないところが出てきます。
キャリアの前半は基礎研究に取り組みました。後半は徐々に応用も視野に入れた研究が増えていきました。応用になると、特に半導体の分野は「生き馬の目を抜く」ところもありますし、世界よりも早いスピードが研究開発に求められます。最終的には資金循環も含めた視点がないと発展していきません。
国立大学には、法人化前の国のブランチとして、与えられた予算を消化する組織文化が残っています。つい最近までは内部留保もできませんでしたし、投資もできなかったことも、組織文化が変わらなかった原因の一つです。そこに疑問を呈したのが、私の総長就任1年目のことでした。
資金循環を含めてエコシステムを作り、公共財として機能拡張をしていくことによって、一層大学らしい価値創造ができると考えたのです。出口を模索していたところに、このような動きを支援しよう、大学が独自の基金を形成できるようにしようと登場したのが大学ファンドの仕組みです。
国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議による審査の状況では「改革の理念が組織に浸透している」と評価された。この背景に大野総長のリーダーシップがあったことは間違いない(文部科学省のWebサイトより)――これまでの実績に加え、明確な変革への意思(ビジョン)とコミットメントが評価されたように感じました。「改革の理念が組織に浸透している」ことも評価されています。企業経営においても、経営層と社員の目線を合わせるのはとても難しいですね。冒頭の「インパクト・タレント・チェンジ」のうち、特に「チェンジ」が最も難しいと思われます。
多様な意見があるのが、良い大学の指標です。しかしその中で、方向性を共有することも重要です。行動変容やマインドセットの変化が一番難しいですね。いかに未来志向で、変わっていくか。これは非常に大きなポイントの一つだと考えています。
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