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東北大・大野英男総長に聞く 「10兆円ファンド」支援候補に選ばれた舞台裏:東北大学の挑戦(4/5 ページ)

» 2024年02月27日 08時00分 公開
[今野大一,ITmedia]

大野総長のリーダーシップ 何が奏功した?

――大きなビジョンを提示したことに加え、一致団結したチームを組めたことも、成功要因の一つだと感じます。総長はリーダーとして、どんな指示を出しましたか?

 「横串を」と常に呼びかけています。縦割りにしてしまうと、大学の本来の力が出せないからです。これは学術的インパクトにも社会的インパクトにも当てはまります。人材を多様にして、いろいろな人をきちんと結び付けられる環境を作ろうとしています。

 一方で今回の提案は、大きな反省に基づいてもいます。それは国立大学が法人になった20年前、法人化に伴ったさまざまな業務が発生しました。安全衛生管理や装置の見回りなどもあり、報告や記録の義務もあるのもあって、これは一例ですが、いくつかの委員会を立ち上げてこなしました。現場でこれらの業務を担当したのは、若手の教員や大学院生です。法人化に伴って発生した業務を引き受けるための予算や人員がついていませんでした。企業ではあり得ないことですね。

 加えて運営費交付金の減額が始まりました。それらは本学だけでなく、国立大学全体に重くのしかかりました。このようにして研究時間、特に若手の時間を減らしてしまったことは、研究力低下の大きな要因だったと考えています。

 今回の提案はそこを解放するものです。これにはリソース、すなわち予算が必要なわけですね。人を雇用するなどして、研究者でなくてもできる仕事から、研究者を解放しなければならないのです。今回の提案では、研究環境をきちんと整えることが大きな柱となっています。

――縦割りをやめることによって多様性のある有機的なチームを作り、組織的な課題を明らかにすることで本質的な問題を解決しようとしたのですね。

 この20年間の日本の研究シーンで、インパクトをなかなか上げられなかった原因の一つがここにあったと考えています。また、本学においては東日本大震災の影響もありました。いずれにせよ忙しすぎるのです。

 例えば新型コロナの件でも、それなりの研究者人口がいるはずなのに、日本の研究者による論文の数も被引用数も多くはありませんでした。この背景には、コロナの場合には医療従事者でもある研究者が主として関わりますが、診療と教育、研究の全てをやらなければならず、研究現場に余裕がなかったことがあると考えています。

 他方、そのような中でも産学連携を近年は伸ばすことができました。関わった研究者の「産業に貢献したい」という熱意と、産学連携の仕組み作りの賜(たまもの)です。

 30年に向けた東北大学のあるべき姿(ビジョン)と、その実現を目指した中長期の方針(重点戦略)や具体的なアクション(主要施策)を定めた「東北大学ビジョン2030」では「アンダー・ワン・ルーフ型産学連携拠点」の構築を掲げました。医薬品や材料科学などの分野で共同開発を推進し、30年までに産学連携による収入を、18年比で5倍の165億円へ拡大させることを目標にしました。

 当初は「高い目標を掲げたが、どのような仕組みを作れば良いのか、何をやればできるんだろうか」と、担当は手探りの状態でした。そこから共創研究所などの仕組みも整え、社会に呼びかけたところ、産学連携経費は年率約13%の伸びを見せ、現在の収入は100億円を越えるまでになりました。大学として産業界の大きな期待とニーズに応えている実感があります。

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