マーケティング・シンカ論

マーケ事例だけを学んでも“再現性”は高まらない 「筋の良い学習プロセス」を知るトライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」(3/3 ページ)

» 2024年02月28日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]
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How-Toや事例学習に注意!

 最後に、9象限マトリクスで触れなかった「How-Toや事例を学ぶ」について注意喚起をしておきます。

 マーケティング学習において大きな障害(?)となっているのが、「手っ取り早く手が出せて、なんとなく賢くなった気になれるコンテンツ」が世にあふれていることです。

 YouTubeやXで観る動画はラクです。再生ボタンをポチッと押せば、何もせず情報が向こうから流れてきます。しかも、どの動画コンテンツも(途中で離脱されないよう)相当洗練されています。「ポイントは3つ!」「これだけでOK!」と限界まで情報を削ぎ落とし、対談や講義ならパンチラインの箇所だけを編集でつなぎ合わせ、テロップ付きで「魅せて」くれます。

 これらの動画コンテンツはクオリティが高く、飽きずに(むしろ楽しみながら)観ることができ、そして一定の(学びの)達成感や充足感を感じさせてくれます。

 また、成功事例を解説するWeb記事も日々大量に生産されています。事例は分かりやすいためとっつきやすく、(ヒントや考える材料ではなく)「答え(=すぐにまねできる成功の方程式)」と捉えられがちです。

 しかし、A社の成功事例は「A社特有のマーケティング課題を解決するために実施した施策によって、A社の課題が解決した事例」です。その成功事例はA社の商品特性、強みや弱み、顧客基盤、競争環境、使える予算、タイミングといった最適性などが合致したから成功したのであり、B社がそのまままねても前提が違いすぎてうまくいくはずがありません。

 理論や概念の解説が多い本は「抽象的すぎて現場では使えない」「事例があれば分かりやすい」といった感想を持たれがちですが、具体の事例からパターンや法則を見いだすことが抽象化(≒理論化)なのですから、抽象的で当たり前なのです。

 具体の事例ばかり学んでいても、再現性は高められません。手法や概念を抽象で学び、自身の努力で具体に落とす。第一線で活躍しているマーケターは、ほぼ例外なくこのプロセスで仕事をしています。あなたも、そろそろ「事例くれくれ族」から卒業するときです。

 How-Toや事例を学ぶなとは言いません。ただ、そこを徹底的に学んでも、マーケターとして成熟することは難しいでしょう。それを理解し、本質的な学習に取り組んでください。

 次回は、学習効率を加速させるインプット学習術の一つ目として(本記事でも一部紹介しましたが、改めて)9象限ごとの推薦図書をご紹介します。

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著者紹介:株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長 池田 紀行

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1973年生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手企業300社以上のマーケティング支援実績を持つ。宣伝会議マーケティング実践講座 池田紀行専門コース、JMA(日本マーケティング協会)マーケティングマスターコース講師。 年間講演回数は50回以上で、延べ3万人以上のマーケター指導に関わる。近著『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)のほか、『売上の地図』(日経BP)、『自分を育てる働き方ノート』(WAVE出版)など著書・共著書多数。X(旧Twitter):@ikedanoriyuki

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